株を相続する5つのステップと注意しておくポイント
これまでの遺産相続では、現金や不動産などが一般的でした。
しかし、最近はサラリーマンの方や主婦の方も始めておられる資産運用として「株式」も遺産相続の対象になることが増えています。
あなたのまわりでも、株主総会へ出席する知り合いがいると思います。
また、株主優待を受けている同僚がいるかもしれませんね。
株式の数が多い少ないという違いはありますが、株式を所有している人が増えているということは、遺産を相続するときにどのようなことに注意し、どうすればできるのかを知っておく必要があります。
そこで今回は不動産や株式を含めた遺産相続の相談を得意とする、おと総合事務所が株式の相続についてお伝えしていきたいと思います。
1: 株式には上場と未上場がある
株式には「上場」と「未上場」があります。
そして株式の相続では、この違いによって相続の手続きが変わってきます。
1.1:上場株式の場合
はじめに、上場株式について知っておいていただきたいことがあります。
それは、平成21年1月5日から施行された
「株式のペーパーレス化(電子化)」
この日までは、株式を保有すると「株券」と呼ばれる紙が株主の元に届けられるようになっていました。
少し前のテレビドラマなどを見ていると、金庫の中から「株券」を取り出すシーンもあったものです。
しかし、紙の株券は無くしてしまうこともあるため、電子化することで紛失をなくし管理を統一するように変わりました。
そのため、この日以降に株式を所有した方は、紙ではなく
- 証券保管振興機構(通称「ほふり」と呼ばれています)
- 証券会社
このようなところに開設した口座で電子化された株式を持つようになったのです。
そのため、あなたが相続する株式は、家の中や金庫などを探しても、紙の株券は見つからないこともあります。
また、この日以前に所有していた株式を、ほふりに預託しなかった分に関しては、株券発行会社または、株券発行会社が委託している信託銀行などで、
「特別口座」
が開設され、そこで管理されています。
どちらにしても、個人の家の中に株式があるというよりは権利だけが存在し、株式という現物に近いものは管理している会社に存在しているため、相続人からするとわかりにくい相続対象である場合もあります。
被相続人(故人ですが)から生前に聞いていて知っているなら証券会社などもわかりますが、生前に聞いていない場合は、いったいどこの証券会社なのかどうかもわかりませんし、どれくらいの株を持っているのかもわかりません。
このあたり、不動産と違って実物が目に見えにくいため、遺産がどれだけあるのかをきちんと整理するとき、プロの手を活用した方が後から「株、あったんだけど・・・」ということになりにくいと思います。
1.2:未上場の場合
未上場の株式に関しましては、電子化制度は適用されません。
そのため、家の中や貸金庫などに株の所有を示す紙などが存在しているはずです。
ただし、未上場の場合も上場と同じく、被相続人から聞いていればわかりますが、そうでない場合は非常にわかりにくい遺産となります。
あなたが独立して家を出てから、親御さんが今後のために未上場の株を所有していたとしても、
「○○という会社の株を買ったんだ」と聞かされないことの方が多いでしょう。
当然あなたは株式の存在を知りませんから、遺産分割協議の場から抜けてしまっている可能性も出てきます。
被相続人のことをすべて把握されているのなら大丈夫ですが、独立してからのことはそこまでわからないという場合、
不動産や株、銀行預金などを含めて、しっかりと探してもらえる専門家に依頼するのがもっとも間違いの少ない方法です。
2: 株を相続するときの注意事項とは
株を相続するときには、注意しておくことがあります。
(1)法定相続の割合で分けるのが難しい
現金や預金ですと、法定相続の割合にあわせて遺産を分割して相続できます。
しかし、株式は不動産と同じように分割しにくい特性を持っています。
そのためすべての遺産をきちんと洗い出し計算し、その上で相続人同士の協議によって分割内容を決める必要が出てきます。
例えば、ご夫婦に子供が2人の場合。
父親が亡くなると、父親の遺産である現金や預金は
- 妻が半分
- 残りの半分を子供二人が等分
となりますが、株式や不動産は分割しにくいため
- 妻が不動産を相続
- 子供の一人が株式を相続
- 残った資産をもう一人の子供が相続
このように分割するケースもあります。
こういった分割ケースになると、先ほどもお話いたしましたが株式を相続人の間で「誰がどう相続するのか」をはっきりさせるためにも、きちんと探し出す必要がでてきます。
(2)証券口座の開設が必要
株式を相続するとき、いきなり現金化することはできません。
そもそも、株式を相続するときには、被相続人の証券口座から相続する人の証券口座へ移管することになります。
このような手続きが必要なため、もしあなたが株式を相続されるなら、証券口座の開設を行う必要が出てきます。
(3)評価額が変動する
株式は日々、1株当たりの評価額が変化しています。
ですから、仮に現金化しようとした場合、手続きのタイミングで手元に入る金額が変わってきます。
例えば、あなたと兄弟が株式を100株ずつ相続したとします。
あなたは今日、1株100円で現金化しました。
兄弟は10日後、1株120円で現金化しました。
株式の分配は公平かつ平等でしたが、現金化のタイミングによって相続金額に差が起こります。
これは現金や預金の相続と大きく違う部分ですから注意してください。
(4)書類が多い
株式の相続をする場合、手続きが多く書類も多いのが特徴です。
主に次のような書類が必要です。
- 遺産分割協議書(または遺言書)
- 相続する人全員の印鑑証明
- 相続する人全員の住民票
- 相続する人全員の戸籍謄本
- 証券会社の口座開設申込書
- 株券名義書換依頼書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
これを見るだけで、ちょっとうんざりしますよね。
3: 上場株式の相続手続き5ステップ
最後に上場株式の相続手続きを簡単にご紹介しておきます。
STEP1:証券会社の書類を探す
どこに連絡すれば良いかを調べましょう。
かならず電子化されている株に関しては、証券会社から郵送で何らかの書類が届いているはずです。
STEP2:証券会社に連絡する
相続することになった旨を伝えます。証券会社からは相続に必要な書類などが案内されます。
STEP3:相続する人の名義で証券口座を開設する
先ほどもお話しましたが、株式は「移管」する必要があります。
すぐに現金化する場合でも、いったん移管しないとできません。
STEP4:相続に必要な書類を揃えて渡す
先ほど出てきた、必要書類を揃えてください。
STEP5:名義書換が完了
株式が口座移管されれば完了です。
ちなみに非上場株式の相続手続きは、相続する人が株を振り出している会社へ「名義書換」について問い合わせることになります。
非上場の場合、電子化されていませんから、会社によって対応が違うということです。
こういう場合にも、司法書士は詳しく流れを知っていますから、あなたに代わって面倒な手続きをスムーズに進めることができます。
4: まとめ
株式の相続についてお話してきました。
株式の相続で一番難しいのは、現物が見えにくいため、遺産分割協議で見落とされる可能性があることです。
このようなことが起こると、後々もめる可能性も出てきますし、もう一度最初から協議する必要があるかもしれません。
このようなリスクを回避する意味でも、あの面倒な書類の手続きをスムーズに進めるためにも、
相続の専門家である司法書士へご相談いただけると、あなたは書類を集めにまわったり、難しい手続きに振り回されたりすることがなくなります。
遺産相続は公平かつ平等に、そしてスムーズに進めて気持ちよく終わりたいものですね。