親の住宅と農地を相続するならこんな対策を考えておきましょう
親の遺産を相続する。
すでにご両親が他界されている場合なら、祖父母の遺産を相続する。
このような場面で相続するとき、うれしいような、困ったなと思うようなことがあります。
それは同じ土地なのに、宅地を相続する場合と農地を相続する場合とでは状況が変わるからなんです。
もしあなたの祖父母やご両親は農業を営まれているけれど、あなたは農業を選ばずに会社員や公務員、団体職員としてお勤めされている場合、今回お話することを知っていないと、毎年税金ばかり払うことになる可能性があります。
それでは次から、その理由をお伝えしてきます。
1: 宅地と農地について知っておこう
相続する中に「土地」がある方が多いでしょう。
特に祖父母やご両親が農業をされているご家庭であれば、サラリーマンの家庭よりも広い土地を相続することになる可能性が高いです。
一般的に考えて広い土地を相続すると、いろいろなことに使えますから、今まで無かった財産を受け取ることになり、大変うれしいものです。
しかし、広い土地でも宅地と農地では状況が違っています。
例えば、住宅の土地を相続した場合ですと、次のようなことに使ってお金を生み出すことができます。
- 賃貸住宅を建てて家賃収入
- タイムスのようなコインパーキングで副収入
- 広い土地を分割して販売
- 土地だけ貸して毎月収入を得る
- コインランドリーを作って自動的な収入源にする
住宅としての土地はこのように使うことができますから、毎年やってくる固定資産税をこれらの収入から払うことができますし、固定資産税よりも稼げると単純に利益になります。
これは大変うれしいことですね。
対して、、、
相続する土地が「農地」だった場合、どのようなことに使えるのかというと、、、
「農地として使う」
ことになります。
では、農地とはどういうものなのでしょうか?
まず、あなたが相続するかもしれない土地について、法務局へ行って登記事項証明書を見せてもらってください。
登記事項証明書の中の「地目」というところに「田」「畑」と書かれていれば、その土地は農地ということになります。
そして農地となっている場合、その土地には「農地法」という法律が適用されます。
この「農地法」が適用されていると、住宅用地のように、あなたの土地でありながらも自由に売買することができません。
「えっ?」ですよね。
農地法が適用された土地を売買するためには、農地法に沿った手続きが必要になります。
しかし今度は、農地法に沿った手続きが大変面倒。
農地から住宅用地へ変更しようとすると、専門知識をもっていないと挫折することは目に見えています。
このように住宅用の土地と農地とでは、同じ土地でありながら全く別物と考えた方がいいでしょう。
そして、この違いを知っておかないと、次にお話するように「土地はあるけれど、それだけ」という状態になってしまいます。
2: 農地の相続が難しい理由
住宅用地を相続するのは、手続きも比較的簡単ですから、お時間にゆとりのある方でしたらご自身で手続きを完了させることができます。
また、住宅用地は先ほども出てきましたが、相続した後に様々な使い方ができますから、相続しても使い方によっては利益を生み出すことも可能です。
しかし、農地となると状況が変わります。
まず、農地は農業に使うことを前提としています。
ということは、農地は農家さんか、これから農業をはじめようとする人しか取得できません。
ただ、遺産相続に関しては、農地であっても農業をしない人へ相続できます。
「だったら良かった」と思うかもしれませんが、農業をしない人が農地を取得した場合でも、農地ということに変わりはありませんから、農業に使うことが前提なのも変わりません。
ということは、、、
もし、サラリーマンであるあなたが農地を相続した場合、農地を勝手に売買することもできませんし、あなたが農業をすることもありません。
また、農地を住宅用地へ転用することを考えたとしても、手続きが面倒ですし、仮に手続きが出来るとしても
「農地の中には住宅用地へ転用できない」
という、あなたの土地でありながら自由にならないものもあるんです。
土地を相続するというと、多くの人が「うれしく」思うことでしょう。
しかし、あなたが農業を営んでいない場合、農地を相続したとすると、土地活用に困ることになります。
最近ではこのケースが増えてきており、農地を相続したけれど上手に使えなかったため、耕作放棄地として存在しているところも多いです。
3: 相続して気になる農地の税金関係の話
土地を相続すると、相続税とランニングコストとしての固定資産税がかかってきます。
相続税に関しては農地の評価ということが必要となりますので、ご自身で計算が難しいようなら税理士さんに評価を頼むといいでしょう。
農地の評価に関しては、複雑な計算が必要な場合があり、少し説明を聞いただけでは難しいかもしれません。
そして、もう一つの税金である、毎年やってくる「固定資産税」。
こちらは役所が毎年の税額を計算し、忘れたころに納税通知書があなたの手元に届きます。
ここで予想外に感じることは、農地だからといって固定資産税が安いわけではないということです。
確かに住宅用地よりは安いところが多いのですが、農業を行っている場合は安いとか、周辺地域の状況によっては高くなる場合もあります。
だからといって、農地を売買することも簡単ではありませんから、毎年固定資産税を払って、相続した農地を持っているだけという方もいらっしゃいます。
4: 生前に対策することが肝心です
住宅用地は生前に相続の対策をしなくても何とかなります。
しかし、農地に関しては生前に相続対策を行っておく方が良いでしょう。
ご両親や祖父母がそろそろ農業をできなくなってきた。
それくらいの時期から、相続の専門家(司法書士や弁護士)に相談して、農地をどうするのか検討しておいてもらいたいのです。
農業を営む方に売る予定があるのか。
家族の誰かが農業を継ぐのか。
住宅用地へ転用して不動産で収益を生み出すのか。
ご家族とも相談して、生前に対策しておくことが肝心です。
5: まとめ
宅地と農地。
どちらも土地でありながら、売買なども含めて自由度が全く違ってきます。
そのため何も知らないまま農地を相続した場合、
「どうしたら良いの?」
となり、使えないまま税金だけを払うことにもなりかねません。
今回お話しました内容は、相続が難しい農地に関するごく一部です。
それくらい農地に関する決めごとは難しく、また、農地のある場所によっても変わってきます。
ですから、農地を相続する場合、時間と手間がかかりますので、生前から対策をしておくことが重要となります。
そして、相続する人が多い場合、有利な農地を取り合いし、もめることもあります。
そんなことにならないためにも、生前に対策しておきたいですね。