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遺言書と遺産分割協議の優劣|その相続登記、間違っていますよ!

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遺言書と遺産分割協議の優劣|その相続登記、間違っていますよ!
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もしも、ご両親が書いた「遺言書」の内容が、あなたの望むものとは遠くかけ離れたものだったら、「あなた」ならどうしますか。

 

遺言書をなかったことにして、改めて遺産分割協議をしたいと思いませんか。

 

「でも、、、そのような遺産分割協議は認められるのだろうか」

 

このような声に応えるために、今回は「遺言書の内容と異なる遺産分割協議ができるのかどうか」と「そのあとの間違えやすい相続登記や税金などの手続き面」について詳しくご説明したいと思います。

 

1 遺言書を無視して「遺産分割協議」はできるのか?

悩んでいる人

結論からお話しすると、遺言書の内容とは異なる「遺産分割協議」もすることができます。

しかし、「無条件」で遺言書の内容とは異なる遺産分割協議を認めているわけではないので、ご注意ください。

 

裁判所が「このような遺産分割」を認めた背景には、「相続人みんな」がその内容に納得しているのなら、その結果を否定するのは難しいという考えが潜んでいます。

 

この考え方は重要なので忘れないでくださいね。あとで特別な意味を持ってきます。

 

ではさっそく、その裁判所が求めている条件について詳しく見ていきましょう。

次のいずれかに当てはまるケースでは、このような遺産分割は認められません。

 

  • 遺言者が、遺言書と異なる遺産分割を禁止している
  • その遺産分割協議に反対している相続人が一人でもいる
  • その遺言書の存在を知らない相続人が一人でもいる
  • 相続人以外の受遺者がいる場合で、その受遺者が反対している
  • 遺言執行者がいる場合で、その遺言執行者が反対している

 

条件はたくさんありますが、かんたんに言ってしまえば「関係者みんな」が納得していればいいわけです。

 

【ワンポイント:「法」は遺産分割より「遺言書」を優先しているはずなのに・・・】

 

遺言書とは「亡くなった方の最後の想い」です。何よりも優先されなければいけません。

それでは、なぜ遺産分割協議が優先されるのでしょうか。

 

これも視点を変えれば答えが見えてきます。

遺言者(遺言を書いた人)は、何を望んでいるのでしょうか。

 

それは、相続人たちの幸せです。遺言書で「分け方」を指定したのは、相続人たちに争ってほしくないからです。

 

そこで、裁判所は次のように考えたわけです。

  • その相続人たちが、遺言書とは違った「分け方」を望んだのであれば被相続人もその考えを尊重するはずだ。
  • 被相続人(亡くなった方)もそれを望むだろう。

 

「遺言書と異なる遺産分割協議をすることもできる」

 

この結論を知っている方も多いでしょう。

そしてこれを知っている方の多くが、この遺産分割協議の内容に従って、被相続人(亡くなった方)から相続人への相続登記をします。

 

でも、残念ながらこれは間違いです」。詳しく説明していきます。

 

2 この結論にたどり着くまでの考え方は「ふたつ」ある!

ポイントの画像

「遺言書があっても、それとは異なる遺産分割協議をすることはできる」

結論は、この理解で問題ありません。

 

しかし、この結論にたどり着くまでには「ふたつの考え方」があることをご存知でしょうか。

 

この違いを意識している方は多くありません。そして、この違いを知らないために「本来するべき手続き」を飛ばしてしまっている方が多くいます。

 

実は「法律の専門家」の中にもいます。

その間違いが顕著に表れるのが「相続登記」でしょう。

 

まずは、それぞれのパターンをご紹介し、そのあとに具体的な手続きの違いをご説明します。

 

2.1 遺産分割の方法を指定している遺言書の場合 【ケース1】

これは、「だれが」「どの財産を」「どれくらい」相続するのかを具体的に定めてある遺言書がある場合です。

 

例えば、「A不動産を二男に相続させる」という内容の遺言書が、これに当たります。

  • だれが    →   二男
  • どの財産   →   A不動産
  • どれくらい  →   全部

 

すべての要素が含まれていますね。ここまではいいですか。

ではこの遺言書をもとに、次のようなストーリーがあったとしましょう。

遺言者が「父」で、相続人は「長男」と「二男」だけです。

 

二男は、海外でカメラマンとしての力を試したいと思っています。

A不動産をもらっても、住むこともできなければ管理することはできません。

 

二男としては、その不動産は長男に相続してもらいと考え、長男も同じ考えです。

そこで「長男」と「二男」は、A不動産を長男が相続するとの遺産分割協議をしました。

このようなケースにおいて裁判所が、どのような考え方で遺産分割を認めたのかについて考えていきましょう。

 

復習ですが、遺言書の効力は「いつ」発生しますか?

被相続人が「亡くなった時」ですよね。亡くなった瞬間に効果が発生します。

 

本ケースに当てはめると、父が「亡くなった瞬間」に何もしなくてもA不動産は二男のものになってしまいます。

もう一度いいます。A不動産は何もしなくても二男が相続してしまいます。

 

でも、ちょっと待ってください。遺産分割は、なんのためにするものでしたか?

それは(遺産的)共有状態を解消するためでしたね。

 

ある人が死ぬと、その人が持っていた遺産は「相続人みんな」の共有になってしまいます。そこで、それを解消するための手段として遺産分割協議があるのです。

 

そうすると、本ケースでは長男と二男で「遺産分割協議をする余地がない」ことになってしまいます。

 

でも、そうはいっても「長男」も「二男」も遺産分割に納得しているのに「裁判所」としても、それをダメだと言えません。

 

そこで、裁判所は次のように考えました。

いったん、二男が相続したものを、長男に「贈与したり」「交換したり」することはできる。

そして同じ相続の流れで行う、この話し合いも「遺産分割」と大きく変わるところはない。

そうであれば、この話し合いも「通常の遺産分割」と同じように扱っていこう。

このような結論を導き出しました。

 

ここでのポイントは、結論はどうであれ父が死んだ瞬間に「二男がA不動産を取得してしまっている」ことです。

このポイントは、あとの手続きに影響してきます。

 

2.2 相続分を指定している遺言書の場合【ケース2】

「遺言書」で遺産全体に対する取り分(割合)だけを指定しているケースです。

個別の財産について「だれ」が相続するのかまでは言及していません。

 

たとえば、「相続分は、長男が3分の2で二男が3分の1とする」という内容の遺言書が、これに当たります。

 

ではさっきと同じように、この遺言書をもとに、次のようなストーリーがあったとします。

遺言者が「父」で、相続人は「長男」と「二男」だけ。遺産は「A不動産とB預金」だけだったとします。

 

長男は、いま住んでいるA不動産がほしいと考えています。

二男は、不動産はいらないから、B預金がほしいと考えていました。

 

ふたりは「A不動産を長男が」「B預金を二男が」相続するとの遺産分割協議をしました。

「ケース2」ついても「どのような流れ」で相続人が遺産を相続したのかを見ていきましょう。

 

この遺言書には「相続する割合」だけが書かれており、「どの財産」を「だれ」が相続するのかについては書かれていません。

 

ケース1と違い、遺産は(遺産的)共有状態のままです。

そうすると、なんの問題もなく遺産分割協議が認められそうですね。そして遺産分割が行われると、その効果は「相続時」にさかのぼります。

 

少しわかりにくい表現なので、説明を加えます。

  • 『このような遺産分割協議がまとまれば、父が亡くなった瞬間に「A不動産を長男」が「B預金を二男」が相続したこととして扱っていこう』

このことを、遺産分割の効果は「相続時にさかのぼる」と表現します。

 

【ポイント】

  • A不動産は、父が亡くなると「その瞬間」から長男のものです。二男は、一瞬たりともA不動産を手に入れていません。
  • B預金は、父が亡くなった瞬間に二男のものです。長男は、一瞬たりともB預金を手にしていません。

 

3 相続手続きの違い|登記・税金

わかった人の画像

この2つのケースの違いから、このあとの手続きに「どのような違い」がでてくるのかを見ていきましょう。

次の2つの側面から考えてみたいと思います。

  • 不動産登記
  • 税金

ではいきましょう。

 

3.1 相続登記

不動産の相続登記(名義変更)に、どのような違いが出るのでしょうか。

 

それぞれのケースを振り返りながら、解説していきます。

【ケース1】

「A不動産は二男に相続させる」という遺言書があったが、「A不動産を長男に相続させる」との遺産分割協議がされた。

【ケース2】

「相続分は、長男が3分の2で、二男が3分の1とする」という遺言書があり、「A不動産を長男が、預貯金を二男が相続する」との遺産分割がされた。

 

まず、不動産の権利(所有権)が「どのように移っていった」のかを考えていきましょう。

 A不動産の現在の名義人は父であったとします。

 

「所有権の流れ」は次のようになります。

【ケース1】

父 → 二男 → 長男

【ケース2】

父 → 長男

この流れを登記に反映させる必要があります。

 

そうすると次の登記申請が必要になります。

【ケース1】

1件目:相続登記 (父から二男へ「相続」を原因とする相続登記)

2件目:所有権移転登記 (二男から長男へ、「贈与」または「交換」を原因とする所有権移転登記)

【ケース2】

1件目:相続登記 (父から長男へ「相続」を原因とする相続登記

このように登記の申請件数が変わってきます。

 

「ケース2」は、1件の登記申請で終わりです。

それに対して「ケース1」は、相続登記と所有権移転登記の2件の登記申請が必要になってしまいます。

 

「ケース1」についても、1件の相続登記だけで長男への変更を認めるべきだという見解はありますが、現状ではそのような対応をしてくれる法務局は多くありません。

 

なぜかというと、登記のルールブックのようなものに、ケース1のときは2件の申請でやりなさいという、国からお達しが出ているからです。

 

このルールを知らずに遺言書を出さず、遺産分割協議書だけを登記申請書につけて相続登記の申請をしてしまう専門家がいます。

 

また、このルールを知ったうえで、遺言書を隠して、遺産分割協議書だけを添付して申請する専門家もいるようですが、これはすべきではありません。

 

ルールは守りましょう。

 

もちろん、法務局と打ち合わせをしたうえで、1件の申請でするぶんには問題ありませんよ。

 

3.2 税金

税金については、いずれのケースでも相続税を収めるだけで大丈夫です。

 

「ケース1」の場合でも、相続税とは別に「贈与税」がかかることはありません。

 

4 まとめ

 

遺言書と異なる内容の遺産分割をすることができます。

しかし、登記申請に関しては、遺言書の内容によって、申請件数が異なります。

 

すべてを同じように扱うのではなく、個別に判断するようにしましょう。

 

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