成年後見人になったら知らないでは許されないマイナンバーの知識
一時期、世間を騒がせた「マイナンバー」
いつの間にか耳にする機会も少なくなってきました。
日常生活のなかで、マイナンバーを意識している人はどれくらいいるのでしょうか。制度自体をよく知らない方も多いのではないでしょうか。
- 「マイナンバー、そんなのあったな」
- 「そんな紙が送られてきたけど、どこかにいってしまったよ」
- 「そもそも、あの制度ってなんのためにあるんだ?」
これまでは、それでよかったかもしれませんが、後見人という立場ではそうもいきません。
成年後見人は、成年被後見人(本人)の考えを尊重しながら、本人が不利益を受けないように注意をはらい、支援することが求められます。
この支援には、当然、マイナンバーの管理も含まれています。後見業務をするにあたっては、マイナンバーの基本的な知識を押さえておきましょう。
細かい仕組みを覚える必要はありません。
- マイナンバーとはなにか?
- それは、なんのためにあるのか?
この程度で大丈夫です。今回はこの2つにスポットを当てて、わかりやすく解説したいと思います。
では制度を振り返っていきましょう。
1 マイナンバーとは?
マイナンバーとは「個人を特定するために国民一人ひとりに与えられた番号」です。日本に住んでいる(住民票がある)人すべてに割り振られました。
このマイナンバーは、個人番号とも言われ12桁の番号の組み合わせで作られています。
マイナンバー制度の目的は、縦割りになっている行政の事務を効率化し、われわれ国民が利用しやすい環境を整え、不平等がない公正な社会を実現することです。
1.1 「公正な社会」の意味
私たちは、その所得に応じて、税金を納めています。
その税金は、
- 公立学校の建設費や運営費
- 暮らしを良くするための研究開発費
- 医療費の一部補助
- 介護サービスの補助金
- 上下水道の整備
などに使われ、私たちの生活に還元されています。
納税額は、所得によって変わります。所得が高ければ多く支払い、所得が低ければ少ない金額ですむ仕組みです。
一見すると公平な制度に感じますが、実際にそうなのでしょうか。
サラリーマンは、副収入でもなければ職場を通して、きっちり1円単位まで国に収入を把握されてしまっています。
それに対して「宗教法人」「投資家」「自営業者」「農業従事者」などは、どれくらいの収入を得ているのかは、自己申告を信用するしかなく、国もそれを正確に知ることはできません。
ほとんどの方が、正しい所得を申告していると思いますが、中にはこれをいいことに、その所得を少なく申告している人もいます。
これを聞いて、納得できる方は多くないでしょう。このような不満の声を解消するためにマイナンバーの仕組みが期待させています。
マイナンバーと銀行口座や証券口座をひもづけすることによって、
- いくら残高があるのか
- いくら入金したのか
- いくら引き出したのか
- どんな資産をもっているのか
などを正確に把握することができます。
これによって、これまで曖昧にしか収支を把握できていなかった人たちについても、正確な情報を知ることができるようになるのです。
お金やその他の資産を正確に知ることによって、公平に税金を負担させることができます。
また、社会保障についても、お金の入出金を正しく知ることで、年金や生活保護費の不正受給を防ぐことも期待できます。
これがマイナンバーに期待されている「公正な社会」の実現です。
1.2 行政の効率化と国民の利便性の向上とは?
行政の窓口業務もマイナンバーを導入することによって、私たちが使いやすいサービスになることが期待されています。
あなたも、このような経験が一度はあるのではないでしょうか。
- 「年金のことは、年金事務所に聞いてください」
- 「税金のことは、税務署に聞いてください」
- 「登記のことは、法務局に聞いてください」
- 「国民健康保険の移行の手続きは、会社から資格喪失証明書をもらってきてください」
「あちらへこちらへ」たらい回しにされ、同じ書類を何度も違う窓口に持っていく。このような経験をしたことが一度はあるのではないでしょうか。
(将来的には)マイナンバーと、これらの情報を一体化させることによって、縦割りの行政の事務が一本化され、私たちの諸手続きはマイナンバーさえ持っていれば、どの窓口でもすべて完結することができるようになるわけです。
これがマイナンバーに期待される「行政の効率化」です。
2 マイナンバーを使える局面は「限定」されている
ただ、ここまで万能な制度だと、少し怖い気もします。私たちの生活が丸裸にされるようで、気持ち悪さもあります。
この情報を元に悪さをされたら大変です。
そこで、マイナンバーを使える局面は「制限」され、それに違反した場合には、重いペナルティーが科せられています。もちろんマイナンバーのシステムは、悪用されないように何重にもセキュリティー対策を施してあります。
具体的に使うことが認められている局面は、次の3分野です。
- 税務分野
- 社会保障分野
- 災害対策分野
さらに詳しく説明すると、
【税務分野】
- 相続税の申告
- 所得税の申告
- 法定調書を税務署に提出する場合
【社会保障分野】
- 健康保険
- 介護保険
- 生活保護
- 障害者福祉制度
【災害対策】
- 被災者台帳の作成についての事務
- 支援金の支給についての事務
などの手続きに使うことが考えられます。こちらに挙げた手続きは、一部で他にもあります。
成年後見人として、本人のマイナンバーを扱う際には、言われるがまま提出するのではなく、なぜ必要なのか、その根拠はどこにあるにか、自分が納得した後に提出するようにしましょう。
3 まとめ
いかがでしたでしょうか。
成年後見人として知っておいてほしいマイナンバーの知識を紹介させていただきました。
マイナンバーは「大切な個人情報」です。後見人は本人のその大切な個人情報を管理する立場にあります。
マイナンバーは以前に比べ、取り上げられる機会が少なくなってきました。その結果、その大切さの意識が薄れてきたように思います。
成年後見人に選ばれたからには、もう一度その大切さを思い出しましょう。