家族信託という新しい相続の考え方。もしものときにも安心な方法を紹介します
遺産相続の内容に含まれることの多い「不動産」。
お住まいの自宅である場合。
あなたからすれば、おじいちゃんが持っている賃貸物件ということもあるでしょう。
このように相続にはつきものの「不動産」。
思っているとおりに相続できれば良いのですが、突然こんなことが起こると、すべてが「停止」してしまうこともあります。
では、どのようなことが起こるのか。
また、そのようなことに遭遇しないためにはどうすればいいのか。
その方法でもある「家族信託」について、お話していきます。
1: もしものとき、あなたはどうしますか?
もしも、あなたのおじいちゃんが、認知症と診断を受け、2~3ヶ月で進行し、すぐにあなたが誰か、あなたのお父さんが誰かわからなくなったとしたら。
おじいちゃんが持っている不動産についても曖昧になり、お金の面もよくわからない状態になったとしたら。
もし、あなたのおじいちゃんが冒頭でお話しましたように賃貸住宅の「所有権」を持っておられたとしましょう。
所有権とは、物について自由に「使用」「収益」「処分」できる権利です。
所有者の欲するまま、誰からの制約も受けずに自由に扱うことができるということです。
この所有権を持っていれば、賃貸物件を売却したり修繕したりするのも自由です。誰の許可もいりません。
賃貸物件から得られる家賃収入や、売却したときの代金も、この所有者のものです。他の者は受け取れません。
これは、逆に考えると所有者でなければ何もできないことを意味しています。
この権利を、認知症となったおじいさんが持っていたとすると、、、
あなたのお父さんかあなたは、賃貸物件を売却しようとか、修繕して価値を上げ、家賃収入をアップさせようと考えた場合、次のような問題が出てきます。
それは、どのような問題かといいますと、、、
あなたのお父さんが、おじいちゃんに代わって賃貸住宅を
- 売却できません
- 修繕もできません
というような問題です。(原則できないのです)
当然ですが、親族であるあなたも同じですから、何もできません。
売りたくても売れない。
修繕したくてもできない。
まさに「完全停止状態」です。
おじいちゃんが「介護施設」へ入所するために必要な費用を、賃貸物件を売却することで得るのなら、成年後見人制度を使うことで、売却することや、修繕して家賃収入を上げることはできます。
しかし、こういう「おじいちゃんが得る」こと以外では、例え親族であっても勝手に何もできないのが実状です。
では、このようなことが起こらないためには何ができるのかというと。
2: 家族信託という選択
「家族信託」を使うのがおすすめです。
家族信託とは、家族に財産を託して管理し継承することです。
家族のための大切な財産を、家族が管理する。
このような特徴があります。
特に現在マスコミなどでも取り上げられることの多い「認知症」は、思いもかけないタイミングで発症することがあります。
また、人によっては、その進行が早かったりして、相続手続きを考える間もなく「認知症」となってしまい、自分で判断できなくなることもあります。
では、家族信託が従来と何が違うのか、次にお話していきます。
3: 家族信託とは
同じような名称で
- 商事信託
- 民事信託
というものがあります。
商事信託とは、信託銀行が行う営利目的の信託であり、信託銀行へ報酬を払うことで、大切な財産を管理してもらう方法です。
対して、民事信託とは、営利目的の信託ではありません。
この民事信託の中で、信頼できる家族に財産を託す方法が「家族信託」です。
このような「家族信託」には、次のような特徴があります。
- 将来の認知症対策になる。
例えば、冒頭でお話しましたような場合でも、家族信託によって、おじいちゃんからおとうさんへ「賃貸物件」を信託契約しておけば、
おじいちゃんが認知症となり判断できなくなっても、おとうさんが賃貸物件の売却や修繕を行うことができるのです。
- 財産を誰に承継してもらいたいかを指定できる。
これはあなたの家族構成や、相続人との関係にもよりますが、はっきりと承継してほしい人を指定できるため、紛争などが起こりにくくなるというメリットがあります。
他にも
- 自分の会社の株式継承
- 障がいをお持ちのお子さんのために
このような場合にも「家族信託」を利用すれば、遺産についてあれこれ頭を悩ますことなく、安心して暮らすことができるでしょう。
4: 家族信託を含めた相続対策を行うタイミングとは
では、家族信託を含めた相続対策を行うタイミングは、いつがいいのかを見ておきます。
試験勉強や病気の治療など、どんなことも同じですが「早め」の対応がベストです。
親御さんや、おじいちゃん、おばあちゃんが健康で元気なときに、家族信託を利用してもらいたいです。
というのも、やはり最近の傾向として考えさせられるのは「認知症」が増えていることでしょう。
体調の変化が起こってきて、寝たり起きたりの生活が増え、そのうち「何となく忘れっぽい」が「思い出せない」に変わってくると、相続するタイミングが近づいているにもかかわらず、家族信託を利用するタイミングを逃していたということもありえます。
本人が「わからない」状態になると、家族信託はできません。
ですから、家族信託を含めた相続対策は、親御さんやおじいちゃん、おばあちゃんが元気で健康なときに行っておくのが適切なタイミングなのです。
家族が本人さんの問題を感じ始めたときは、最後のタイミングだと思ってください。
そのタイミングを逃すと、相続は複雑になることが多いです。
5: まとめ
家族信託は、まだまだ認知度の低い制度です。
司法書士を含めて、まだまだ取り扱っている方は多くありません。
でも、この制度は、あなたのご家族全員で検討してみる価値があると思います。
もし、ご家族で検討されるとき、あなたの家族構成や、相続する人たちの関係から、どのようになるのかよくわからないという場合には、私たち「おと総合事務所」へご相談ください。
相続に関するお悩みは、ご家族によって全て違います。
私たちが丁寧にお話をお伺いしながら、相続についてのお悩みを一つひとつ解決させていただきます。