【相続専門家コラム】相続手続きしなかったら、どんなことになると思いますか?
相続の手続きをしなかったら、いったいあなたの生活に何が起こると思いますか?
もし、葬儀などでバタバタしていて、その後にも立て続けにライフイベントが起こってしまい、悪気は無いけれど相続の手続きが放ったらかしになっていたら、どんなことが起こると思いますか?
借金の取り立てのように、夜に「ドンドンドン!」と扉を叩かれるのでしょうか?
それとも、玄関に「はやく相続しろ!」って、貼り紙をされてしまうのでしょうか?
税務署員が「税金はこれくらいで、○○日までに払ってください」と訪問してくるのでしょうか?
あなたは、どのようなデメリットをイメージされていますか。
今回は相続専門の司法書士である「おと総合事務所」が、相続の手続きをしなかった場合に起こることやデメリットをお伝えしていきます。
1: 相続手続きしなかったら、いったい何が起こるのか
はっきりいいまして、冒頭でお話したようなことは起こりません。
ですから、まずは安心してください。
相続の手続きをしなかった場合、どのようなことが起こるのかというと、、、
相続対象となっている不動産や銀行預金などを「どうにかしよう」としないなら、特に何も起こりません。
ただし、相続の手続きには「期限」が定められているものがありますから、その分だけはきちんと手続きをしておきたいですね。
■期限が決まっている手続き1:限定承認・相続放棄
相続に関して「承認する」か、「放棄」するかを決めないといけません。
これが死亡を知ってから3ヶ月以内と決まっています。
■期限が決まっている手続き2:準確定申告
被相続人(相続する人)の所得税を申告する必要があります。
これは死亡を知ってから4ヶ月以内と決まっています。
■期限が決まっている手続き3:相続税の申告
相続税の申告も期限が決まっています。
死亡を知ってから10ヶ月以内に行わないといけません。
これらは期限が決まっていますから、きちんと手続きをしないといけませんが、これ以外の
- 登記の名義変更
- 貯金の名義変更
- 遺産分割協議書
などは(他にもありますが)、厳密に期限は定められていません。
また、罰則もありませんから、何もしなければそのままということもあります。
2: 相続手続きしなかったら、起こるかもしれないデメリット
では、あなたが名義変更の手続きや遺産分割協議書の作成をやらなかった場合、どのようなデメリットが起こるのでしょうか?
- 「銀行預金が時効」を迎えてしまった場合
- 「相続人が増えてしまった」という場合
- 「相続人が認知症になった」という場合
- 「相続人に未成年が登場」という場合
このようなことが起こると、相続する手続きがどんどんと複雑になっていきます。
相続関係者が増えれば増えるほど、話がまとまりにくくなりますし、戸籍謄本や実印、印鑑証明などを取り寄せ揃える労力が大きくなってきます。
相続人が認知症を患い、症状が進行しているのなら、家庭裁判所から「成年後見人」の選任を申立てる必要が出てきます。
相続人が未成年となると、家庭裁判所から特別代理人を選任してもらう必要が出てきます。
当然、このような場合には手続きが必要となります。
確かに相続は放置しても、すぐに罰則や何かが発生することは、あまりありませんが、このようなデメリットがあるため、ある日「家を売ろう」としたら大変なことになることが考えられます。
そして、人間で一番困るのは、時の経過とともに、相続人の気持ちも変わっていくことでしょう。
当初は「いいよ、いいよ、相続なんてしないから、全部もっていってよ」と言っていた人が、
数年経過すると手の平を返したように「きっちり分けるのが当たり前だろ!」とか「どうしてお前がオレより多いのよ」と言った、心境や生活習慣の変化から、まったく別のことを言いだし手続きが当初思っていたように進まないこともあり得ます。
3: でも、やっぱり面倒だからと放置すると・・・
どうなるのか、少し考えてみましょう。
昨今、日本でも増えている「離婚」から「再婚」という状況をケースにすると、次のような「面倒」が起こる可能性があります。
例えば、
あなたには、お父さんとお母さんがいます。
あなたは一人っ子です。
あなたが住んでいるお家の名義は「お父さん」になっています。
あなたのお母さんには、前の夫との間に子供が一人います。
時が過ぎ、3年前、お父さんが会社で突然倒れ亡くなります。
原因は脳梗塞でした。
このとき、お父さんの遺産を相続するのは、
- あなたのお母さんが半分の1/2
- あなたが半分の1/2
ここまでは何の問題もありません。
しかし、このとき、相続税は申告し納付しましたが、突然のことにバタバタしていたこともあり、自宅の名義を変更していませんでした。
そうです。亡くなってからも自宅の名義は「お父さん」になったまま。
相続手続きが放置されている状態です。
このまま、何も起こらないのなら、それはそれで良かったのですが、、、
なんと、先月、お母さんがお風呂場で倒れ緊急入院。
心筋梗塞が原因で亡くなります。
あなたは葬儀を終え、相続の手続きに入ります。
あなたは「自分だけ」で終われると思っていましたが、相続人を調べていくと、、、
お母さんの前の夫との間のお子さんに、お母さんがお父さんから引き継いだ「1/2」が相続されることが分かりました。
そうです。
このようになると、あなただけの判断で相続手続きをすべて終わらすことはできません。
まして、あなたは、お母さんの前の夫とのお子さんと会ったこともありませんし、連絡する手段も持っていません。
もし、このようなことが起こったら、どうしたらよいのかわからなくなると思います。
また、新たに登場した相続人が、どのような人なのかわかりませんから、話がスムーズに運ぶこともあれば、こじれることも考えられます。
ですから、このようなことが起こる前に、
今回の例であれば、お父さんが亡くなられたときに、あなたとお母さんが司法書士へ依頼して
「遺産分割協議」をし、自宅の名義をすべて「あなた」にすると決め、相続手続きをしておけば、このようなことに巻き込まれることがなかったのです。
昭和以前とはライフスタイルも変化し、バツイチ、再婚、ということが、特別なことではなくなっています。
このようなケースは、これから増えていくでしょう。
相続手続きを放置しておいたとしても、確かにペナルティはないかもしれません。
でも、未来にこのような問題と遭遇するのなら、先に手続きを終わらせておく方が、あなたのライフプランを確かなモノにできると思います。
4: まとめ
相続手続きをしなかったら、、、怖い思いをすることはありません。
しかし、今回お話しましたように、親族の関係性によっては「いざ手続きしよう」としたとき、大変複雑なことになっている可能性があります。
特に、相続人の中に「未成年者」「認知症」の方が含まれていると、さらに手続きは複雑になります。
そして、本編でもお話しましたが、人の気持ちは変わりやすいものです。
気持ちが変わる前に、きちんと法的な手続きを済ませておくことが、あなたにとって、明るくストレスを抱え込むことがない未来を約束してくれるのです。