浪費癖がある人は成年後見制度を利用できるのか?
成年後見制度において、以前からよく議論されていたのが「浪費者(ろうひしゃ)」はこの制度を使えるのかという問題です。
浪費者は自分の収入に見合った「お金の使い方」ができません。
一見すると成年後見制度の射程(しゃてい)に入りそうな気もします。
「法は」この点をどのように考えているのでしょうか。
今回は、浪費者が成年後見制度を利用することができるのかについて考えてみたいと思います。
1 浪費者は成年後見制度を利用できるのか?
お金があれば、あと先考えずに、使ってしまう。
いわゆる浪費者。
この浪費癖を治すために成年後見制度を利用することはできるのでしょうか。
結論から言ってしまうと、成年後見制度を利用することはできません。
2 なぜ成年後見制度を使えないのか?
成年後見制度は、判断能力の下がった人の財産を守るためのものです。
正常な判断能力を持っている人は、浪費癖があっても、成年後見制度は使えません。
以前の制度では、浪費者も「保佐」という成年後見の制度を使うことができていました。
しかし、現在の制度に移ってからは、成年後見制度を使うことを「法は」認めていません。
なぜでしょう。
私たちの財産を自由にできるのは、「所有者本人」だけです。
- ものを売る
- 誰かに貸す
- 捨てる
- そのまま持ち続ける。
本人だからこそ、これらを選択できるのです。他人が「これらのこと」に干渉(かんしょう)することはできませんし、するべきではありません。
他人が、あなたの財産を自由にできたのでは、安心して暮らすこともできませんよね。
この考え方が原則であり、私たちの生活の根幹です。
判断能力が正常であるかぎり、個人の財産について、他人が積極的に介入することを認めるべきではないのです。
浪費者について保佐が認められていた以前の制度においても、本人の保護というよりは、その家族の利益を守るという側面を強く持っていました。
そのような経緯から、成年後見制度では浪費者を、その対象とはしていません。
3 浪費者が成年後見制度を使えるケースもある
浪費者は「成年後見制度」を使えませんが、つぎのケースではどうでしょうか?
認知症その他の精神疾患(せいしんしっかん)によって正しい判断ができなくなっている。
そのせいで、自分の収入にあわない「宝石」や「高級家具」を買ってしまう。
そのすべてが、必要ないもの。
正常な判断ができれば買わないものを、判断能力が下がってしまったことが原因で買ってしまっている。
このケースでは成年後見制度を使うべきでしょうか?
それとも使うべきではないのでしょうか?
そうですね。まさに成年後見を使うことが期待されるケースでしょう。
この結論にピンとこない方は『【初心者向け】成年後見制度が3分でわかる!後見は本人の利益を守るものです』をお読みください。
この結論からもわかるとおり、浪費が何かしらの精神的な障害から引き起こされている場合は、成年後見が認められるケースもあります。
浪費者とは、自分の収入や貯金に見合った生活ができず、自分やその家族の日常生活すらまともに送れないほどに、お金を使ってしまう習慣を持っている人です。
このお金の使いすぎが、「病気」や「精神的な障害」が発端となって起きているのであれば、成年後見の申し立てをすることができます。
4 まとめ
浪費者は成年後見制度を使えません。
しかし、その浪費が何かしらの精神的な障害が原因でおきているであれば、成年後見制度の対象になることもあるでしょう。