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【認知症とは】成年後見人として知ってもらいたい認知症の正しい知識

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【認知症とは】成年後見人として知ってもらいたい認知症の正しい知識
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成年後見人の資質は、本人に寄り添い、常に本人が望んでいる行動とは何かを考え続けられることだと『成年後見人になるための「たった一つ」の条件』で書かせてもらいました。

 

これを実効性のあるものにするために欠かせない知識が「認知症の正しい理解」です。医療関係者と同等の知識は必要ありません。「認知症とはどういうものなのか」「認知症になるとどのような行動を取ってしまうのか」「その原因は何なのか」といった基本的なことで大丈夫です。

 

認知症になると、私たちのこれまでの常識では予測できない言動をすることがあります。成年後見制度と認知症は切っても切り離せない関係です。

 

認知症を正しく知らないと本人の一挙手一投足に「イライラしたり」「怒鳴ったり」「心ない言葉をぶつけたり」してしまう可能性があります。もちろん認知症を知ったとしてもこれらの気持ちを抱いてしまうこともあるでしょう。それでも認知症の症状を知っているのと知らないのでは、その対応が大きく違ってきます。

 

そこで、今回は「認知症の基本」をわかりやすくご紹介したいと思います。

 

1 認知症とは

説明している先生

認知症とは、「何かしらの病気」が原因で日常生活に支障が出ている「状態」です。認知症とは病気の「なまえ」ではなく、このような「状態」を指すものです。次のような状態が認知症です。

 

脳の病気

認知機能に障害がでる

生活に支障が起きる

 

これだけでは分かりにくいので、もう少し具体的に説明しますね。たとえば次のようなことです。

 

  1. 病気によって脳の神経細胞にキズがつく(脳の病気)
  2. そのため正常な判断ができなくなった(認知機能障害)
  3. スーパーで野菜をカゴに入れ、レジを通らずに店を出てしまう(生活障害)

 

この3つ要素を満たした状態が認知症です。病気などによらずに「脳の老化」によって物忘れが増えることは認知症ではありません。

 

  • 脳の病気 → 認知機能障害 → 生活障害

 

この一連の流れをひっくるめて認知症といいます。

 

2 いろいろな認知機能障害

認知症、物忘れ

脳の病気によって「認知機能」に異常があらわれると、「物忘れが多くなったり」「話の内容が理解できなかったり」「時間や場所がわからなくなったり」します。

 

この認知機能の障害は次の3つに分けることができます。

 

  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 判断能力の障害

 

一つ一つ詳しく見てきましょう。

 

2.1 記憶障害

  • 少し前の出来事が思い出せない
  • 同じことを何度も聞いてしまう
  • 忘れ物が多くなる
  • 数分前に聞いたことを思い出せない
  • 約束をすっぽかす

 

これが記憶障害の初期症状です。脳の老化による物忘れとは違い、自覚症状がありません。少しずつ人間関係にも影響が出てくる時期です。

 

たとえば次のようなことが起こります。

 

  1. 友達と食事に行く約束をしたのに、それを完全に忘れて約束の場所に行かない。
  2. 友人は何の連絡もなくすっぽかされたと思う。
  3. それが何度もつづく。
  4. 本人に悪気はないが、友人としてはストレスが溜まり怒りを覚える。
  5. 本人としても友人が怒っている姿を見ると、約束をしないようになってくる。

 

認知症がはじまると、孤立してしまう高齢者が多くいるのはこのような流れからです。

 

記憶障害の初期は、新しい記憶を忘れても古い記憶(遠隔記憶)は覚えています。そして症状が重くなると、徐々に古い記憶も思い出せないようになってきます。

 

  • 生まれた場所
  • 母校
  • 家族のなまえや家族構成
  • 生年月日
  • 電話番号

 

これらの古い記憶も忘れてしまいます。

 

2.2 見当識障害

見当識とは、「いつ」「どこで」「誰と」「何を」したという状況を正しく理解できる能力のことです。

 

たとえば、家族に今日の出来事を話したとしましょう。

 

  • 「今日のランチは、〇〇(友人の名前)と浅草に天丼を食べに行ったんだ」
  • 「そこで、こんなことがあって、、、、、、あんなことがあって、、、、、」

 

今日の出来事を家族に話せるということは、見当識が正常ということです。これに障害があると今日の出来事をうまく家族に話すことはできません。見当識が正しく機能しないと「いつ」「どこで」「誰と」という基本的な状況がわからないためです。

 

見当識障害を簡単に言うと「ここがどこで」「今がいつか」という生活をするうえで欠かせない要素がわからなくなってしまうことです。

 

見当識障害は次の3つに分けることができます。

 

  • 時間(の見当識障害)
  • 場所(の見当識障害)
  • 人物(の見当識障害)

 

【時間の見当識障害】

これが起きるとカレンダーを見ても今日が「何月何日」なのかが分からなくなってしまいます。

 

あなたも「今日は何日だっけ?」「今日は何曜日だったかな?」という経験を一度はしたことがあるでしょう。でもカレンダーを見ることによって「そうだ。今日は1月20日だ」「そうだ。今日は水曜日だ」と気づくことができます。これは見当識障害がないからわかるのです。

 

認知症になった方はカレンダーを見ても、今日が何月何日なのかが分かりません。

 

日付がわからないということは、病院の予約日に行けなかったり、くすりの管理ができなかったりといった弊害が出てきます。

【場所の見当識障害】

認知症になると場所の感覚が鈍くなります。

 

  • 目的地に着いたが、帰れない
  • ゴミ出しの場所がわからない
  • 今どこにいるのかがわからない

 

認知症の方の自宅を訪問するとゴミであふれている場合が少なくありません。これは場所の見当識障害が原因で起こっている可能性があります。

 

どういうことか説明します。

 

  1. ゴミを出そうとするが「置き場所」がわからない
  2. 「所定の場所」以外に置いてしまう
  3. ご近所・自治体から注意される
  4. 怒られるため除々にゴミを出さなくなる

 

このような悪循環が起きます。もしも、部屋にゴミが増えてきたとすれば、それは認知症のサインかもしれません。

【人物の見当識障害】

これは「ある人」が誰なのかがわからなくなってしまうことですが、「ある特定の人」がまったくわからなくなるというよりは、世代が少しズレて認識されてしまうことが多いです。

 

わかりにくいと思うので例を出します。

 

  • お父さんが、「娘」に対して「妻」だと思って話しかける
  • おじいちゃんが、「孫」を「息子」だと思ってしまう
  • 「妻」を親切な「お手伝いさん」だと思ってしまう

 

認知症になると「人の名前」や「関係性」がわからなくなってしまうことがあります。それでも、大切な人という認識がなくなっているわけではありません。

 

最初、間違えられるとショックを受けるかもしれませんが、本人にとって、あなたが大切な存在であることは本人もきちんと認識しています。

 

2.3 判断能力の障害

これは言葉のままですね。判断能力がなくなったり、低下したりします。初期の段階では日常生活は問題なく送れます。しかし、いつもと違うことが起きるとパニックになってしまったり、一日を通して連続した予定を立てたりすることが難しくなります。

 

たとえば、次のようなことです。

 

  • 電気の使い過ぎでブレーカーが落ちてしまった。何が起きたのかわからずパニックになり、最終的に思考が停止する。そしてヘルパーさんが来るまでじっとしている。
  • 「午前中に近所の家に回覧板を届けて、その足で友人と約束したランチのお店に向かう。その帰りに夕飯の買い出しをする」といった一連の予定が立てられない。

 

後者は場所の見当識障害にも関わることですが、「いまどこにいるのか」がわからなくなっているので、移動時間がどれくらいかかるかが割り出せません。

 

また、まとめて買い出しするのも難しくなります。1食分の買い出しはできても3食分をまとめて買うことはできなくなってきます。

 

初期段階では行動や準備を「まとめて」行うことはできませんが「一つ一つの作業はできる」のも特徴です。個別に具体的にお願いをすれば問題なくできます。

 

そして症状が重くなると、季節や気候にあった服装が選べなくなったり挨拶ができなくなったりしてきます。10月頃になると、夏物をしまって冬物を出しますよね。認知症になるとこれが難しくなります。

 

正常な人は寒ければ保温効果に優れたダウンジャケットやコートを着ますが、認知症の方は「薄い夏物の服」を何重にもして着て寒さをしのぎます。

 

さらに「判断能力の障害」が悪化すると社会的な判断はほぼ不可能になります。

 

3 生活機能障害

徘徊するおじさん

「脳の病気」によって「認知機能」に問題が起き、ふだんの生活に支障が出てしまう状態が生活機能障害です。

 

たとえば、

  • お金を引き出そうと思ってもATMが使えない
  • 時間の感覚が疎(うと)くなっているので、約束の時間より早く着いて時間通りに来た人に対して怒ってしまう
  • 夜中に一人で歩きまわる
  • お金が盗まれたと被害妄想に襲われ、人を信用しなくなる
  • 電車やバスなどの乗り方がわからず交通機関を利用できない
  • 行動する意欲がなくなり引きこもる

などがあります。

 

繰り返しになりますが、これらの不都合は「脳の病気」と「認知機能障害」が引き金になっています。

 

4 まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

本人にこれまで通り自分らしく生活してもらうためには、本人を知る必要があります。そして本人を正しく知るためには認知症の基本的な知識が不可欠です。

 

この記事を活用してもらい本人をサポートしていただける幸いです。

 

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