相続で知らないと怖い3つの期限&知って損はない6つの期限
あなたがこの記事を読んでいるということは、「相続の期限」が気になっているのではないでしょうか。
『相続には期限があって、放っておくと何か良くないことが起こるのではないか』
そのとおりです。相続には期限があります。
でも安心してください。
相続において「期限がある手続き」は多くありません。そして、その期限を知ることによって相続を楽に進めることができるでしょう。
このページでは相続における期限を知ってもらい、相続手続きをスムーズに進める力を身につけてもらいたいと思います。
1 なぜ相続の期限を知るべきなのか?
それは相続手続きを「楽に余裕をもって終わらせる」ためです。
突然ですが、あなたのまわりに、何をするにしても「慌(あわ)ててしまう人」と「落ち着いている人」がいませんか?
長い目で見れば、慌てる必要もないのに目の前の仕事にだけ目を奪われて、あたふたしている人。必ずひとりはいるものです。
一方で、たくさんの仕事を抱えているにもかかわらず、冷静に落ち着いて余裕をもって仕事を終わらせる人。
この2人の差は、どこにあるのでしょうか。
それは期限を意識しているかどうかです。
実はこれだけの違いなのです。
落ち着いている人は、期限を知ることによって「そこから逆算」し、いま何をすべきかが見えています。そうすることで、目の前の仕事に全力を注げるのです。
それに対して慌ててしまう人は、ゴールまでの道筋がわかっていません。漠然とした不安に襲われて、すべてが中途半端に終わってしまっています。そして時間だけが無駄に過ぎていきます。
その結果、さらに慌ててしまうのです。
相続も同じです。
余裕をもって相続手続きを終わらせるためには、タイムリミットがある手続きを知る必要があるのです。
2 相続において知らないと怖い3つの期限
いざ相続の手続きをはじめようとすると、「やらなくていけない作業」がたくさんあって、誰でも嫌になってしまうものです。
- 早く進めないと。でも何をすればいいのかわからない
- でも、放置すると良くないことが起こりそう
- 相談する人もいないし、どうすればいいんだ
慌ててしまう気持ちもわかります。
でも落ち着いてください。
期限がある相続手続きを知ることで、これらの不安は解消されていきます。
最初に言ってしまいますが、期限のある手続きは多くありません。
「でも、、、相続の期限はたくさんあるって聞いたけど」
たしかにそうですね。相続の期限はたくさんあります。でも意識しなければいけない期限は多くないのです。
では、さっそくご紹介しましょう。
相続の期限は、大きく2つに分けることができます。
- 死亡届に代表される市役所や年金事務所での手続きにおける期限(行政の手続き)
- それ以外の相続放棄や相続税の申告などの手続きにおける期限
あなたに意識してもらいたい期限は、「2」のほうです。
あなたも一番知りたい情報は、「2」の手続きに関する期限だと思いますので、説明も順番を逆にしてお話させてもらいます。
時間の流れから考えると逆になってしまいますが、「1」の手続きは意識しなくても死亡届を役所に持っていくと次々と案内されて終わっていくでしょう。
では、はじめます。
「2」の相続手続きで、期限が決まっているものは次の3つだけです。
- 相続放棄(または限定承認) ・・・3か月
- 準確定申告 ・・・4か月
- 相続税の申告 ・・・10か月
どうですか?多くないですよね。しかもこの手続きは、誰もがするわけではありません。
相続財産が少なく、「相続税の申告」をしなくてもいい人もいます。
借金や負債がなく「相続放棄」をしない人も多いでしょう。
人によって意識する「相続の期限の数」は異なります。それは一つかもしれませんし、二つかもしれません。
時間に追われてする手続きは、これだけです。
どうですか?少しは気が楽になったのではないでしょうか?
もちろん、相続の手続きはやることが多く大変です。
しかし、期限を知ることによって、そこからスケジュールを立て、無理なく進めることができるでしょう。
では、一つ一つ詳しく見ていきます。
2.1 相続放棄【相続の期限①】
亡くなってから3か月以内にしなければいけない手続きが「相続放棄」です。
これは有名ですよね。
この手続きを知っている人も多いでしょう。
簡単に言ってしまえば、相続放棄とは相続をしないということです。
すみません。説明するまでもないことでしたね。
相続放棄を期限内におこなえば、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことはありません。
2.2 準確定申告【相続の期限②】
亡くなってから4か月以内にしなければいけない手続きが「準確定申告」です。
あなたも毎年2月頃になると、次のような声を聞いたことはありませんか。
- 確定申告の準備をしないと
- 領収書がどこかにいってしまって見つからない
- また確定申告の時期が来ちゃったよ。面倒くさいな。
準確定申告は、この確定申告と同じことです。
ふつうは、本人が2月16日~3月15日までに申告します。
この準確定申告は「相続人」が、亡くなった人に代わって申告をするのでこのような呼び名になっています。
そして、申告期間も異なります。
準確定申告は、亡くなった日から4か月以内に行います。
しかし次の要件に当てはまる方は申告の必要がありません。
- 給与収入が2000万円以下
- 年金が400万円以下
- それ以外の収入が20万円以下
- 事業所得や不動産所得がない
要するに「確定申告をする必要がない方」は、しなくて大丈夫です。
2.3 相続税申告【相続の期限③】
「相続税の申告」
あなたも一度は聞いたことがあるでしょう。
遺産を相続すると、相続税という税金を払わないといけません。
この期限が10か月です。亡くなった日から10か月以内に「相続税の申告」と「納税」を行います。
ただし、相続税は誰にでもかかる税金ではありません。
一定額以上の遺産を相続した人にだけかかる税金です。要はお金持ちにかかる税金ですね。
この一定額を超えなければ相続税はかかりません。この一定の額を「基礎控除」といいます。
【基礎控除】
3000万円 + 相続人の数 × 600万円
ひとつ問題を出しますね。
「父・母・長男・長女の4人家族」で、父が亡くなった場合の基礎控除はいくらでしょうか?
相続人は、母・長男・長女の3人です。
先ほどの公式に当てはめてみてください。すぐにわかりますよ。
3000万円 + 3(人) × 600万円 = 4800万円
答えは、4800万円です。
簡単ですね。
この基礎控除を超える財産をお持ちの家庭は、10か月以内に相続税の申告をしなければいけません。
2.4 おまけ|もうひとつの相続の期限!
余裕があれば、これも覚えてください。
それは遺留分の期限です。
- 遺留分の請求 ・・・1年
遺留分の請求は、必ずしなければいけないものではありません。
たとえ遺留分を侵害されていたとしても、その請求をしなくてもいいわけです。
そこで、上記の期限とは別に、おまけとしてご説明させていただきます。
【なぜ遺留分の請求には期限があるのか】
遺留分を取り戻したい人は、1年を経過する前にこれを請求する必要があります。
遺留分とは、何があっても相続人が最低限もらうことができる取り分のことです。
例えば、お父さんが「全財産を長男にあげる」との遺言書を書いていたとします。
この遺言書があることによって、二男は1円も相続することができません。
これでは二男は困ってしまいます。
そこで遺留分という権利を相続人に与えて、一定額を取り戻せるようにしたのです。
しかし、いつまでもこの権利を認めておくと、長男としては気が気ではありません。
そこで、この権利に期限を設けることにしたのです。
3 知って損はない相続の6つの期限【行政の手続編】
次に説明を飛ばしていた「1」の相続の期限ついてご紹介します。
相続の期限は大きく分けると2つあるのでしたね。
- 死亡届に代表される市役所や年金事務所での手続きにおける期限(行政の手続き)
- それ以外の相続放棄や相続税の申告などの手続きにおける期限
「1」の手続きは、あなたもイメージしやすいと思います。
まずは「1」の期限がある手続きをご紹介してしまいますね。
- 死亡届 ・・・7日以内(国外で死亡した場合は3か月以内)
- 火葬の許可 ・・・7日以内
- 年金受給者の死亡届 ・・・14日以内(厚生年金は10日以内)
- 介護保険資格喪失届 ・・・14日以内
- 世帯主の変更届 ・・・14日以内
- 未支給年金の請求 ・・・5年以内(年金支給日の翌月の初日から起算して)
では一つ一つ見ていきましょう。
3.1 死亡届(7日以内)【相続の期限行政編①】
7日以内に死亡届を提出し、国に対して被相続人が亡くなったことを知らせます。
この届出をすることによって戸籍に死亡したことが記載されます。
次の書類とともに、市役所(または町村役場)に提出します。
- 死亡診断書 または 死体検案書
そして死亡届は下記の者が提出します。
- 親族
- 同居人
- 家主、地主、家屋管理人、土地管理人
- 後見人、保佐人、補助人、任意後見人
3.2 火葬の許可(7日以内)【相続の期限行政編②】
家族の遺体を勝手に「火葬」や「埋葬」をすることはできません。もし無許可でこれらをすれば違法になっていまします。
そうならないために、火葬の許可証の交付を受けます。
死亡届と同時に、役所へ火葬許可申請をします。同じように期限は亡くなってから7日以内です。
ここで勘違いしやすいポイントがあります。
- 火葬許可証
- 埋葬許可証
異なる「2枚の書類」があると思ってしまいませんか。
実は、このふたつの書類は同じものを指しています。
火葬をする前は、火葬許可証として役割を持ち、火葬後は、埋葬許可証としての役割が与えられます。
3.3 年金受給者の死亡届(14日以内)【相続の期限行政編③】
年金事務所へ、年金受給者が死亡したことを伝えて、年金の支払いを停止します。
この届出をしなければ、年金の支払いが止まらずにそのまま支給されてしまいます。
当たり前ですが、死亡した後は年金をもらうことはできません。
もし受け取ってしまうと全額を返金することになります。忘れずに年金の支払い停止の手続きをしましょう。
3.4 介護保険の資格喪失届(14日以内)【相続の期限行政編④】
死亡すると介護保険の資格がなくなります。
死亡してから14日以内に、介護保険被保険者証の返却とともに資格喪失の届け出を市役所(または町村役場)に提出しましょう。
介護保険とは、「介護が必要な人を社会全体で支えよう」という取り組みです。
介護サービスは、タダでは受けられません。高齢になるほど、サービスを受ける頻度も多くなります。それに伴って費用も高くなることでしょう。
その負担を少しでも減らすための制度が「介護保険」です。
死亡するとこの制度を利用する資格がなくなるため、それを届け出ます。
3.5 世帯主の変更届(14日以内)【相続の期限行政編⑤】
世帯主が死亡した場合は、死亡から14日以内に世帯主の変更の届出をします。
世帯主かどうかは、住民票を見ればすぐに分かります。
世帯主ではない方が亡くなった場合は、この届出は必要ありません。
3.6 未支給年金の請求(5年以内)【相続の期限行政編⑥】
未支給年金とは、「支給されるはずだった年金」を受け取る前に亡くなってしまった場合の「その年金」のことを指します。
未支給年金は、亡くなった方と生計を同じくしていた次の家族が受け取ることができます。
優先順位
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 上記以外の3親等内の親族
未支給年金を請求できる人が複数人いる場合は、先順位者が優先され後順位者はもらえません。
4 まとめ
相続の手続きは、やることがたくさんあって、嫌になってしまう方もいます。
闇雲(やみくも)に手を付けると、何度も同じ作業のやり直しを求められたり、何度も同じことを聞かれたりと大変です。
まずは、期限がある手続きを知り、それを期限内に終わらせるためには、いま何をすればいいのか全体を通して考えるようにしましょう。
そうすることによって、無理なく相続の手続きを進めることができるはずです。
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