相続手続きは司法書士や弁護士・税理士・行政書士?あなたはこんな勘違いしていませんか?
相続手続きを、一生に何度も経験したという人を、私は見たことがありません。
多い人でも、自分のおじいちゃんやおばあちゃんから相続したとき。
自分のおとうさんやおかあさんから相続するとき。
これくらいではないでしょうか。
このように、相続の手続きとは、ライフイベントの中では希にしか登場しないことですから、どのような手続きが必要なのか、誰に頼めばいいのかがわからなくて当然です。
そこで今回は、相続手続きを一般の方の数十倍経験してきている私の経験を通して、勘違いして間違わない選び方をお伝えします。
1: 相続手続きの専門家を知ろう
最初に、相続手続きを依頼するとき、勘違いして間違わないためには、相続手続きができる専門家を知る必要があります。
ルールを知らずに野球やサッカーをやっても、勘違いして間違ったまま試合をしますから、いつまでたっても勝てませんし終わりません。
反対に反則ばかりとられて、気持ちも体力も低下して、全部放り投げたくなることでしょう。
相続手続きもこれと同じで、どのような専門家がいるのかを知ることが大切です。
それでは順番にお話してきます。
(1)弁護士さん
弁護士さんは「あらゆる」法律の問題を取り扱えます。
- 刑事事件
- 民事事件
- 医療問題
- 税金問題
- 交通事故
- 過払い請求
- 慰謝料請求
などなど。
そして、当然ですが「遺産相続手続き」もできます。
また、弁護士さんは
- 簡易裁判所
- 地方裁判所
- 家庭裁判所
- 高等裁判所
といった、一般的にはあまりなじみのない(ないほうがいいです)ところへ
「あなたの代理」として交渉する「代理権」を持っています。
これは大変心強いです。
あなたもご存じのように弁護士になるには、国家試験に合格する必要がありますから、ここから見ても弁護士さんは「法律のプロフェッショナル」と言ってもいいでしょう。
しかし、弁護士さんの多くは「遺産相続手続き」を積極的には取り扱っておられません。
というより、揉め事をどうにかするのが仕事ですから、遺産相続の手続きだけというのは依頼を受けておられないのでしょう。
反対に、遺産相続の手続きを行う途中、相続人同士が揉め始め、紛争が起こった場合には「弁護士さん」が登場することになります。
ですから、遺産相続手続きが平和的に行えそうな場合には、弁護士さんを選ぶのはちょっと違ってきます。
一方、最初から「あの相続する親族、やばいよね~」とか「絶対あの人、無茶なこと言って、自分だけ有利なように話を運ぶ気だよね」というような、紛争状態が見えているなら、弁護士さんへ相談するのがいいでしょう。
はっきり言って、遺産相続の手続きで弁護士さんのお世話にならないのが一番ということです。
(2)司法書士
私たち「おと総合事務所」です。
司法書士は「不動産登記」の専門家です。
不動産に関する登記の代理権を持っていますし、最近では簡易裁判所での代理権を弁護士さんと同じように持つようになりました。
ですから、遺産相続の中に「不動産」が入っているなら、相続の手続きから名義変更まで、すべて司法書士でお受けすることができます。
また、
- 遺産分割協議書の作成
- 遺言書の検認
- 限定相続や相続放棄の手続き
- 相続人の調査、戸籍謄本の取り寄せ
- 相続財産の調査
- 金融機関の相続手続き
このような、相続に必要な手続きを行うことができます。
ただし、、、
先ほども言いましたが、相続人の間で紛争が起こると、私たち司法書士ではなく、弁護士さんの登場となります。
『司法書士が活躍している=相続人や親族が平和である』
このような証になると思います。
(3)税理士さん
税金の専門家です。
相続する上で、相続税など税金に関する部分が得意です。
- 準確定申告
- 相続税申告
また、代々続くお店や会社を「事業継承」される場合、相続税が発生することが多いので、この部分に関しては税理士さんのアドバイスが有効でしょう。
(4)行政書士さん
あなたの代わりに難しい公的な書面を作ってくださる方です。
普段の生活の中なら、
- 内容証明郵便
- 契約書
- 各種認可申請書
などなど、公的機関や会社同士に必要となる書面を作ってくれます。
では、相続手続きについてどうなのかと言いますと、
「不動産の登記」が関わらない相続なら手続きができます。
(当然ですが、不動産がなくても紛争が起こった場合には、弁護士さんの登場です。行政書士さんでは対応できません。裁判所への代理権がありませんから。)
親御さんの家が賃貸物件で、他に土地や家屋がなく、身の回りのものと銀行預金や株や車だけだった場合、行政書士さんに依頼するのもいいでしょう。
でも、遺産を調査していく中で、不動産を発見したら、行政書士さんでは対応できません。
この時点で司法書士か弁護士さんの領域になりますから、もしかすると、今までの相続手続きが全部やり直しということも考えられます。
このように、それぞれの専門家には
- できること
- できないこと
- やっていいこと
- だめなこと
があります。
相続手続きを依頼されるときには、これらのことをふまえて依頼するようにしておきましょう。
2: もし勘違いして間違うとどうなるの?
でも、勘違いして間違ったらどうなるのでしょうか?
間違ったからと言って、あなたに罰則はありません。
ただ、これまでの相続手続きがすべて「ふりだしに戻る」ことになるかもしれません。
このとき、被相続人(故人です)の死亡を知ってから、
- 3ヶ月以内にやっておかないといけないこと
- 4ヶ月以内にやっておかないといけないこと
この期限が迫っていれば、ちょっと困ったことになります。
大急ぎで手続きをするように、次の章でお話しする専門家が動き出すことになります。
当然、依頼を受けた専門家は、プロですからあなたにできるだけ負担がかからず、問題になりにくいようにアドバイスをくれるでしょう。
そして手続きを進めてくれるはずです。
でも、やっぱり、できれば最初から勘違いせず選んでおきたいですね。
3: もうわからない!?そんなときの選び方
「ということは、どの専門家を選べばいいのですか?」
このような質問が聞こえてきます。
ポイントは次の3つです。
(1)相続手続きで紛争が起こるか
最初から起こりそう気配があるなら、または、すでに起こっているなら「弁護士」です。
(2)相続するものに不動産が絶対にない
この場合なら、司法書士か行政書士さんですね。
「でも、どこかにあるかも」とか
「田舎なので、誰かに貸したままになっているかも」とか
「ひいおじいちゃんが裏の人に貸したと言ってた記憶がある」
こんな話があるなら、行政書士さんではちょっとつらいかもしれません。
(3)不動産もあるし、銀行預金や株もある
司法書士へご相談ください。
登記の名義変更なども含めて、すべて対応することができます。
また、司法書士は相続人全員へ平等に接します。
特定の人の権利を守る仕事ではなく、ルールに沿って平等に接するため、紛争で勝ち取るのではなく、平和的に配分するのが仕事です。
残された遺産が元で、親族や相続人同士が揉めるのは、故人の意志ではないでしょう。
ですから、最初から紛争が予想されないのなら、司法書士へご相談いただくのが平和的スムーズに手続きが進む方法だと思っています。
4: まとめ
このような理由から司法書士は、生涯の中で何度も相続手続きを行っています。
その中で、様々なご家庭の事情や人間模様を目にすることがあります。
でも、遺産を相続するときに一番必要であり、後からも「よかったね」と言えるのは平和に配分されることではないでしょうか。
司法書士という仕事の内容をご理解いただき、あなたの相続がこれからも「よかった」という気持ちで溢れることが、財産を残してくださった故人に対する最高の感謝の気持ちとなるでしょう。
最初から争いたい人は、いないはずです。
相続の手続きを考えておられるなら、司法書士へご相談いただけると、あなたはいつまでも気持ちよく、清々しく感謝に溢れた毎日を暮らせると思います。