相続の順位で失敗する人に共通する特徴!相続の順番と法定相続分も徹底解説
「相続の順位(順番)」
この「誰が相続人になるのか」という基本的なことを知ることが相続のスタートです。この部分を曖昧(あいまい)なまま進めてしまうと、あとで取り返しのつかない事態が起こるかもしれません。
基本的なことだけど正確に理解している人は少ない、この「相続の順位(順番)」。
そこで今回は、まず「相続の順位で失敗する人に共通する特徴」を知ってもらい、知っているようで知らない「誰が相続人になるのか」「相続の順位とは何か」そして「法定相続分とは何か」について、わかりやすく解説したいと思います。
目次
1 相続の順位で失敗する人に共通する特徴
はじめに言ってしまいますが、「相続の順位」はコツさえつかめば簡単です。
でも間違う人が多いのも「事実」です。
「司法書士おと総合事務所」へ相談にいらっしゃった方の中にも、私から「この方も相続人になりますよ」と伝えると、目を見開いてビックリされる方がいます。なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
それは「インターネット」や「本」に書いてある情報を「丸暗記」していることが原因です。
ネットに転がっている相続のパターンを、よく考えずに自分と似ているということだけで、自分自身にもそのまま当てはめてしまい、そして間違うのです。
あとで説明しますが、次のようなことがあると相続人はドンドン変わっていきます。
- 相続欠格
- 相続の排除
- 代襲相続
- 相続の放棄
など
今は言葉の意味がわからなくて大丈夫ですよ。気にせずに読み進めてください。
これらを考えずに、自分と家族関係が似ているという理由だけで、ネットに書いてある「そのパターン」をそのまま当てはめて失敗してしまうのです。
そして一番の失敗の原因は、丸暗記しているので「その言葉」の意味を理解していません。「その言葉は何を意味しているのか」という視点が完全に抜け落ちてしまっていることです。
たとえば、相続人は「子」だと書いてあったとしましょう。「子」とはどういう意味でしょうか。具体的には「どのような人」を指すのでしょうか。
- 腹違いの子供
- 養子
- 連れ子
- 婚外子(こんがいし)
これらは「子」に含まれるのでしょうか。「子」と一口に言ってもたくさんの意味を含んでいます。相続の順位で失敗する人に共通する特徴は、ネットに書いてある情報を丸暗記し、「それは何なのか(それはどういう意味なのか)」「なぜそうなるのか」という視点を忘れてしまっていることです。
あなたも、そうならないために「この視点」を、ここで身につけてしまいましょう。
では行きますね。
2 相続の順位!相続人になれる順番とは?
だれが相続人になるのかは「法律」で定められています。これは有名ですよね。しかし、一律に「この人(特定の人)」が相続人になるという定め方はしていません。なぜ、このような分かりにくい定め方をしているのでしょうか。それは家族関係が人によってバラバラだからです。
- 結婚している人、結婚していない人
- 子供がいる家庭、子供がいない家庭
- ご両親よりも先に子供が亡くなってしまったケース
「この人が必ず相続人なる」というルール(法律)では、相続手続きに支障が出てしまうことが容易に想像できるのではないでしょうか。そこで「法」は順番をつけて相続人を定めました。
- この人がいれば、この人が相続人になる
- この人がいなければ、次はこの人が相続人になる
といった具合です。では具体的に相続人の順位について見てしまいましょう。
- 第1順位 子
- 第2順位 直系尊属 (父母や祖父母など)
- 第3順位 兄弟姉妹
この順番で相続人になります。「先順位の者」がいれば「後順位の者」は相続人にはなれません。そして、これらを総称して「血族相続人」といいます。
この順位をよく見ると配偶者(妻または夫)がいません。
「配偶者は相続人にならないの??」
そんなことはありませんよね。妻や夫は「配偶者相続人」と呼ばれ、常に相続人になります。血族相続人がいようがいまいが、血族相続人の誰が相続人になろうが「配偶者」は必ず相続人になります。
血族相続人が誰もいなければ配偶者が「単独」で相続人になり、血族相続人がいれば配偶者と血族相続人が「セット」で相続人になります。
相続人を考えるうえでは、まず配偶者がいるのかどうか確認し、次に血族相続人は誰がなるのかを考えるといいでしょう。
3 第1順位の「相続人である子」について深く見ていこう!
お子さんがいれば、その子供が誰よりも「優先して」相続人になることができます。ここまではいいですよね。では、少し深堀しながら問題点を確認していきましょう。ここからはわかりやすいように、問題を出しながらそれに回答をするという形式で説明します。
【続柄についての注意点】
「続柄」は被相続人(亡くなった人)から見た関係で統一します。
- 「父」とあれば、それは被相続人の父のことです。
- 「子」とあれば、それは被相続人の子供のことです。
- 「孫」とあれば、それは被相続人の孫のことです。
3.1 前妻との間の「子」は相続人になれるのか?その順位は?
被相続人(亡くなった人)は「妻」と「長女」と3人で仲良く暮らしていました。実は被相続人には離婚歴があり、前妻との間に「息子」がいました。「その息子」は前妻に引き取られ、親権も前妻が持っています。
離婚してからは、被相続人も一度も連絡を取っていません。現在の「妻」と「長女」は、まったく面識がありませんでした。
前妻との間に生まれた「この息子」は、相続人になるのでしょうか?
答えは、この息子も相続人になります。「妻」と「長女」と「この息子」の3人が相続人です。
【解説】
前妻は離婚しているので「配偶者」ではありません。ということは前妻は相続人にはなれません。
しかし、息子との関係は離婚しても「親子のまま」です。その息子も、被相続人にとっては「子供」です。息子から見れば被相続人は離れて暮らしていても「父親」です。
よって、前妻との間に生まれた息子も「相続人」になるのです。
もしも、この息子を含めないで遺産分割が行われれば、その遺産分割協議は無効になってしまいます。
3.2 養子は相続人になれるのか?その順位は?
被相続人には子供がいませんでしたが「おい」と「養子縁組」をしていました。被相続人は、これまで一度も結婚をしたことがありません。ご両親は健在です。千葉の田舎で元気にふたり一緒に暮らしています。
このような家族関係において被相続人が亡くなると誰が相続人になるのでしょうか?
答えは「養子がひとり」で相続人になります。「養子」は第1位順位の相続人です。
【解説】
養子縁組とは、簡単に言ってしまうと「法律上の親子関係」を作る手続きです。
養子になった「おい」は、法的には被相続人の子供です。
元気なご両親がいますが、これが分かるとあとは簡単ですね。
ご両親の「相続の順位」は何番でしたか。
2番目ですね。
ご両親は、先順位の子がいるので相続人にはなれません。
3.3 子供が先に死んでいる場合はどうなる?
被相続人には、長男と長女ふたりの子供がいました。妻はすでに他界しています。
さらに「長男」も5年前に事故で亡くなっています。その長男には「ふたりの子供(被相続人の孫)」がいました。
このような家族関係において被相続人が亡くなると相続人は誰になるのでしょうか?
答えは「長女」と「孫ふたり」の3人です。
このように長男に代わって孫が相続することを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といいます。ちょうどいいタイミングなので、ここで代襲相続を覚えてしまいましょう。
3.4 代襲相続
被相続人の遺産を「亡くなった長男」に代わって「孫」が、相続することを代襲相続といいます。これは先ほど説明したとおりなので、いいですよね。
「でも、お父さんが生きているけど、孫がおじいちゃんの遺産を相続したと聞いたことがある」
そうなんです。相続人が被相続人より先に死亡しているケース以外にも代襲相続が発生するケースがあります。相続人が先に死亡しているケースが有名ですが、これだけではありません。他の代襲原因を紹介しましょう。
それは、次の2つです。
- 相続欠格(そうぞくけっかく)
- 相続排除(そうぞくはいじょ)
詳しい説明はしませんが、もし「相続人である長男が相続欠格者であったり」、「相続人として廃除されたり」している場合は、その長男の子供(被相続人の孫)が代襲相続人として遺産を相続することになります。
ここまではいいですか。では、1つ「いじわる問題」を出します。
被相続人には、「長男」と「長女」ふたりの相続人がいます。他に相続人はいません。
しかし長男は、遺産を相続する気がありません。
被相続人が亡くなると、すぐに長男は「相続放棄」をしました。その長男には「ひとり息子」がいます。さて、このような状況で被相続人が亡くなったとしたら、誰が相続人になるでしょうか?
ポイントは「相続放棄」でも代襲は起きるのか、です。
答えは「長女のみ」が相続人になります。代襲原因をもう一度確認してみましょう。
- 死亡
- 相続欠格
- 相続排除
代襲原因に「相続放棄」は含まれていませんね。代襲原因は「死亡」「相続欠格」「相続排除」の3つだけです。ここは勘違いしやすいポイントなので、混同しないように注意しましょう。
4 第2順位の「相続人である直系尊属」について深く見ていこう!
直系尊属(ちょっけいそんぞく)とは、「父母」や「祖父母」のことです。たとえば「子供がいない人」が亡くなりご両親が健在なら、そのご両親が相続人として遺産を相続することになります。
では、もし「父母」も「祖父母」も元気だったら、みんなが仲良く相続人になれるのでしょうか。残念ながら、そういうことにはなりません。「第2順位の相続人のルール」には続きがあります。
民法
被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
直系尊属が複数人いるケースでは「親等の近い人」が優先して相続するとあります。例えば「父母」と「祖父母」の4人が生きているとします。この時、相続人になれるのは「父母」の2人だけです。祖父母は相続人にはなれません。
もしも「ご両親が死んでいて」祖父母が生きているのなら、その祖父母が相続人になることができます。しかし、ケースとしては多くないでしょう。これが第2順位の相続人である直系尊属について気をつけるポイントです。
ここまで「直系尊属」という言葉を当たり前のように使ってしまいましたが、ここで言葉の意味を説明したいと思います。
「直系ってなんだ~」
「尊属ってなんだ~」
このように思いますよね。
4.1 直系とは?
直系とは、縦の関係をイメージしてください。
- 祖父母
- 父母
(あなた)
- 子
- 孫
これと対比する考えが傍系(ぼうけい)です。傍系とは横のイメージですね。
- 叔父や叔母
- 兄弟や姉妹
- いとこ
- 甥や姪
4.2 尊属とは?
尊属とは、上の世代のことです。
- 祖父母
- 父母
- 叔父や叔母
「たてよこ」の関係は考えずに、上の世代のことをこう呼びます。
これと対比する考えが卑属(ひぞく)です。卑属とは、下の世代のことです。
- 子
- 孫
- 甥や姪
「たてよこ」の関係は考えずに、下の世代のことをこう呼びます。
5 第3順位の「相続人である兄弟姉妹」について深く見ていこう!
第1順位と第2順位がいない場合は、「兄弟」や「姉妹」が相続人になります。ここまでは分かりやすいです。しかし意外な展開になりやすいのも、この「第3順位」です。
「自分が知らないところで相続人になっているなんてことも!」
実際に相談があった事例を紹介します。
- 「突然、役所から固定資産税のお知らせが届いた」
- 「まったく身に覚えがない」
- 「詐欺だろか」
スタートはこのような展開でした。話をよく聞いてみると、相談者の父親は再婚していて前妻との間に子供Aがいたそうです。子供といっても当時60歳を超えていました。
そのAは、生涯独身で子供もいません。上の世代もみんな他界しています。そのAが亡くなり「相続人」は父を同じくする相談者だけだったのです。いわゆる腹違いの兄弟ですね。相談者としては、その人と兄弟という感覚がありません。
しかし母は違いますが、法律上は「兄弟」です。
このように両親のどちらかに離婚歴がある場合、自分でも気づいていないところで相続人になっているケースがあるかもしれません。
6 相続人は取り分が決まっている??法定相続分とは何か?
相続分とは、その相続人の「取り分」のことです。「法定相続分」とは、名前のとおりで法が決めた「相続人の取り分」です。
決めたといっても、これに何が何でも拘束されるわけではありません。「相続人みんな」が合意していれば、これとは違う分け方もできます。
この法定相続分は、遺産分割をする際の「目安」といった位置づけです。
法律は、
- 妻であれば、これくらい相続するのがいいのではないか
- 子であれば、これくらい相続するのがいいのではないか
- 兄弟や姉妹であれば、これくらい相続するのがいいのではないか
と考えたのです。
繰り返しますが、あくまでも目安です。
「長男がすべての遺産を相続する」という内容でも、「相続人みんな」が同意しているのであれば、それはそれでいいわけです。
もしも、ひとりでも納得しない相続人がいれば、この基準をもとに遺産分割をしていくことになります。調停や審判の実務でも、この基準に従った判断が下されます。
7 具体的な法定相続分を覚えよう!
相続分で混乱しやすいのは「血族相続人と配偶者相続人がセット」でいる場合です。配偶者(妻または夫)だけなら、その配偶者がすべての遺産を相続して終わりです。血族相続人だけでも簡単です。頭数で平等に分けるだけです。
例えば、相続人が子供3人だとして考えてみましょう。各相続人の法定相続分は「3分の1」です。父母2人が相続人なら、法定相続分は「各2分の1」です。兄弟や姉妹が相続人の場合でも、考え方は同じです。ここまでは簡単ですよね。
では、混乱しやすいパターンを整理していきましょう。
7.1 「子と配偶者」が相続人の場合における法定相続分を考えてみよう!
法定相続分は次のとおりです。
- 配偶者 : 2分の1
- 子 : 2分の1
てっとり早く、具体例で見ていきましょう。
遺産 : 預金4000万円
相続人 : 妻・長男・長女
法定相続分は「妻が2分の1」・「子供が2分の1」でしたね。注意するのは子供の相続分です。これは「子供全員」で2分の1ということです。仮にこれを法定相続分で分けるとすると、次のとおりになります。
- 妻 : 2000万円
- 長男 : 1000万円
- 長女 : 1000万円
簡単でしたか。
7.2 「直系尊属と配偶者」が相続人の場合の法定相続分を考えてみよう!
法定相続分は次のとおりです。
- 配偶者 : 3分の2
- 直系尊属 : 3分の1
これも具体例を見ていきましょう。
遺産 : 預金3000万円
相続人 : 妻・父・母
仮にこれを法定相続分で分けるとすると、
- 妻 : 2000万円
- 父 : 500万円
- 母 : 500万円
になります。これも簡単ですね。では次に行きます。次で最後です。
7.3 「兄弟姉妹と配偶者」が相続人の場合の法定相続分を考えてみよう!
法定相続分は次のとおりです。
- 配偶者 : 4分の3
- 兄弟姉妹 : 4分の1
さっそく具体例を見ていきましょう。
遺産 : 預金4000万円
相続人 : 妻・兄・妹
仮にこれを法定相続分で分けるとすると、
- 妻 : 3000万円
- 兄 : 500万円
- 妹 : 500万円
になります。これで終わりです。混乱しやすいというのは、大げさでしたね。
7.4 法定相続分は、あくまで目安!
具体例では、法定相続分にしたがって遺産分割をするケースをご紹介しましたが、先にも説明したとおり「相続人みんな」が納得しているのであれば、この相続分に従わずに分割することもできます。
法定相続分は、あくまで目安です。忘れないようにしましょう。
8 まとめ
相続人の順位や法定相続分は、基本的なことですが、これを正確に理解している人は多くありません。
ここで間違ってしまうと、それから相続手続きがすべて間違ってしまいます。
相続手続きの根幹の部分と言ってもいいでしょう。
相続人の順番や法定相続分は、基本的なことであって、最も重要なことです。
正確に理解し、相続の手続きを進めるようにしてください。
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