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【こんなはずでは…】相続放棄の本当のデメリット!

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【こんなはずでは…】相続放棄の本当のデメリット!
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「相続放棄のデメリット」としてよく紹介されるのが、

  • ほしい遺産も受け取れない
  • 撤回ができない
  • 相続の順位に変動が起きる

です。でもよく考えてください。これらは「相続放棄のデメリット」なのでしょうか。たとえば、次のような遺産があったとします。

借金1000万円   と   預金20万円

あなたは相続放棄をします。その結果、

  • 預金20万円が受け取れません
  • 相続放棄の撤回ができません
  • 相続権が後順位者に移ります

これらはデメリットなのでしょうか。デメリットというよりは「注意点」です。本当に考えるべき相続放棄のデメリットは別にあります。それは遺産に対する「管理責任が残ってしまうこと」です。

「管理??預金の管理のこと??」

ちょっと違います。このままだとイメージしにくいので、相続放棄をする理由について考えてみたいと思います。一番多い理由は何といっても「(故人が)借金をしていた」です。次に挙がってくる理由が、マイナスの遺産はないが「(自分たちは使わない遺産を)ずっと管理するのが面倒くさい」というものです。

このような感情になるのが、次のような遺産があるときです。

  • 遠方にある「古い建物」
  • 使わない車
  • どこにあるかも分からない山林

など。

これ以外にも、たくさんの預金や株などがあれば相続するでしょうが、これだけでは相続する気にはなりません。

 

「マイナスの財産(たとえば借金)ではないんだから、もらっとけば」

 

このような意見もあるでしょう。でも、財産を持つということは、それを維持するコストがかかるということです。たとえば、車を所有するなら、「車検」「重量税」「自賠責保険」「ガソリン代」など一定のお金を払う必要がありますよね。年間で考えれば大変な金額です。これが維持費です。

 

私の事務所にも、「この維持費から解放されるために相続放棄を検討している」という方から相談を受けることがあります。

 

「(使わない遺産を)管理するくらいなら、相続放棄をしたい」

 

実はこの考えに「大きな落とし穴」があります。それは、

相続放棄 = 管理責任からの解放

ではないことです。今回は、この点についてわかりやすく解説したいと思います。

 

1 相続放棄をしても管理責任が残る

責任が残る人

相続放棄をしても遺産に対する管理責任はなくなりません。正確には相続放棄をしても「別の誰かが遺産の管理を始めるまで」は管理責任が残ってしまいます。

民法(相続放棄者による管理)

相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまでは、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

具体例を出して説明しますね。たとえば「父・子・祖母」の3人の家族がいたとします。そして父が亡くなりました。

 

父の相続人は「子」ですね。でも、その「子」は相続放棄をしてしまいました。相続放棄をすると、「はじめから相続人ではなかったものとみなす」のでしたね。

父に子供はいないものとして考えるので、相続人は「祖母」ということになります。ここまではいいですよね。

 

法律上は、父が「亡くなった瞬間」から「祖母」が相続人になるのですが、祖母にしてみれば「自分が相続人」だとはすぐに気が付くことはできません。

 

「子供が相続人だから、自分は遺産なんて関係ないわ」

 

と思っているかもしれません。さらに、子も「相続放棄をしたのだから、遺産なんて関係ない」と考え、管理をしないかもしれません。そうすると遺産を管理する人がいなくなり、遺産は荒れ放題になった挙句(あげく)価値はどんどん下がっていきます。

 

そこで、そうならないために相続放棄をした人も「次の順番の相続人が遺産の管理ができるようになるまでは管理をつづけてね」というルールにしたのです。

 

相続の順位について詳しく知りたい方はこちらもどうぞ

相続の順位で失敗する人に共通する特徴&相続の順位や法定相続分もわかりやすく解説!

 

2 遺産の管理を怠ったらどうなる?

驚いているおじさん

「相続放棄をした者」の管理責任は「後順位の相続人」に遺産を引き継げば終わりになります。でも、もしも次に管理をしてくれる相続人が現れなかったらどうなるのでしょうか。いつまで経っても管理責任がなくならず、遺産の価値が下がらないようにずっと目を配っていなければなりません。

 

「ずっと管理するのなんかダルい。遺産なんて放っておこう」

 

このように考え遺産の管理を怠る人も出てくるでしょう。そこで、もしも相続放棄はしたものの、つぎの相続人が現れずにその管理を怠った場合はどうなるのか、事例を使いながら考えてみましょう。

父が亡くなり、相続人は東京に住む長男だけです。ほかに相続人はいません。後順位の相続人もいません。

 

父の遺産は、千葉にある「古い建物」と「その敷地」だけです。今では誰も住んでいません。父も昔、祖父から相続したものです。手入れをしていなかった、その建物は今にも崩れそうです。建物というのは誰も住まなくなると、ものすごい勢いで老朽化していきます。

 

遺産である建物は、通学路に面しており、朝と夕方は通学途中の小中学生でにぎわっています。

 

生徒の親御さんは、建物が崩れて子供たちがケガをしないか心配です。そのような状況なので、一人の親御さんが相続放棄をした長男に、建物が壊れないように補修工事をするように願い出ました。

このようなケースで、長男は相続放棄をしたにもかかわらず補修工事をしないといけないのでしょうか。

 

先ほど説明したように、相続放棄をしても管理責任が消えることはありません。管理責任の範囲がどこまでかという議論はありますが、少なくとも第三者へ危険が及ぶような状態になっていれば、それを取り除く義務はあります。

 

本ケースにおいては、建物が倒れないように補強をしたり、また、あまりにも老朽化が進んでいるのであれば建物の取り壊しをしたりすることも管理行為の一環として検討しなければならないでしょう。

 

敷地についても、雑草が伸び放題で不衛生な状態になっているのであれば、草むしりなども管理行為として必要になるでしょう。

もしも、その管理責任を怠り第三者へケガをさせてしまった場合、損害賠償を受ける可能性すらあります。

 

3 管理責任から解放される方法

指示棒で教えている人

相続人が相続放棄をする理由は「価値がない財産を管理したくない」からです。先ほどの例でいえば、(後順位の相続人である)祖母にしても相続はしたくありません。よく考えれば当たり前ですよね。魅力的な遺産があれば子が相続します。相続放棄を選択するにはそれなりの理由があるのです。

 

「じゃあ、なんのために相続放棄をしたんだ」

 

このままでは相続放棄を選んだ意味がありません。後順位の相続人が遺産を相続をしてくれれば話はかんたんですが、そうはいかないでしょう。

 

そうすると、後順位の相続人全員も相続放棄をした場合、または後順位の相続人がいない場合は、いつまで経っても管理責任から解放されません。相続放棄をした相続人は、永遠に遺産の管理を継続しなければいけないのでしょうか。

 

実は管理責任から解放される方法が「ひとつ」だけあります。それは「相続財産管理人」という人を選任し、その管理人に遺産を引き継ぐことです。

 

相続財産管理人の手続きは家庭裁判所で行います。詳しく知りたい方は『なんで相続人でもないのに遺産が相続できるの?|特別縁故者とは?』の中の「3 特別縁故者として財産を受け取るまで」でご紹介しています。

 

まとめ

相続放棄の本当のデメリットをご紹介させていただきました。

遺産が「借金」だけでプラスの遺産がまったくないというケースでは、このデメリットを考える必要はありませんが、「使わない遺産を相続したくない。なぜならその管理がしたくないからだ」という方は、相続放棄をしてもこの管理責任が残ってしまうことを念頭に置いて、相続放棄を検討しましょう。

 

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