専門職後見人は避けたい!そんなときは後見制度支援信託を検討しよう!
「後見制度支援信託のしくみ」についてわかりやすく解説したいと思います。
財産が多い方について成年後見の制度を使おうとすると次の3つの選択に迫られます。
- 専門職後見人をつける
- 親族が後見人になるが、後見監督人の監督を受ける
- 後見制度支援信託を使う
「家族として本人をサポートしたい」「でも後見監督人の監督は受けたくない」、このように考える方は多いでしょう。そんなときに役に立つ後見制度支援信託についてわかりやすく解説したいと思います。
1 後見制度支援信託とは?
後見制度支援信託とは「ふだんは使わない本人(被後見人)のお金を信託銀行等に信託(しんたく)してしまう仕組み」です。
信託とは、あまり聞き慣れない言葉だと思いますが、ここでは一度預けると自由にはおろせない貯金くらいのイメージで大丈夫です。
本人の財産を「日常生活で使うお金」と「それ以外」に分け、日常生活では使わないお金を信託銀行等に預けてしまいます。成年後見人は「日常生活で使うお金」だけを管理します。
この制度を使うメリットとしては、後見人は管理する財産が少なくなり負担が減ります。被後見人(本人)も後見人が自由にできるお金が少なくなれば横領(おうりょう)の心配もいりません。
2 後見制度支援信託の目的
後見制度支援信託の目的は「本人の財産を守り」「本人が安心した生活を送ることができるようにする」ことです。
なぜ信託の制度を使うと、この目的に近づくことができるのでしょうか。それは成年後見人が無意識に行ってしまうムダ使いを防止できるかです。
本人の財産を守る立場にある成年後見人には、本人のお金を適切に管理していくことが求められます。
ムダ使いというと誤解があるかもしれませんが、この本人のお金の管理について、「一般人の感覚」と「法律の理解」にズレが生じることがあります。
日常生活において「家族のお金」と「自分のお金」をしっかりと区別している人はどれくらいいるでしょうか。
あなたもこのような経験をしたことがありませんか。
- 家族とのドライブ。
- 運転にも疲れてきたので、サービスエリアでちょっと休憩。
- 親に財布を借りて、自販機に向かう。
- 親のお金で缶ジュースを買い、のどを潤す。
特に違和感はありませんよね。
ここに法律の落とし穴があります。
法律上は、「親だろうと」「子供だろうと」「配偶者だろうと」、別人です。本人が正常な判断ができるうちは、このような行為も問題になりません。なぜなら、親は「あなた」がお金を使うことに「同意」しているからです。
しかし判断能力が失われてからは、そういうわけにはいきません。たとえ家族であったとしても、勝手にお金を使うことは許されないのです。
成年後見人になったら「本人の財産」と「自分の財産」を明確に分けて管理をしなければなりません。
「ジュース代くらい大したことないじゃん」
たしかに100円は大きい金額ではありません。しかし意識しないでいると、この100円は、いずれ「200円になり」「500円になり」「1000円になり」気がつくとあっという間に「数万円」になってしまいます。
少ない金額でも「常に他人のお金を扱っているのだという意識」を忘れてはいけません。
少額のお金は、「罪の意識を感じにくく」いずれ感覚が麻痺します。
そして、気がついたら手遅れになるのです。本人と成年後見人が扶養関係にあれば、その扶養の範囲で本人のお金を後見人のために使うことは、もちろん認められています。
ただし、それは「本人のお金」と「自分のお金」をしっかりと分けたうえで処理しなければいけません。
このことが頭にないと、違法とは気づかずに本人のお金を使い込んでしまうこともあります。これは横領という罪になる可能性があります。
そのような危険を避け、本人の財産を守るために後見制度支援信託が作られました。
また、多くの財産が信託されることによって、後見人の管理する財産が少なくなれば、後見人の負担も減ることになるでしょう。
3 後見制度支援信託をQ&Aで覚えよう!
ここからはQ&Aを使いながら、より具体的にその内容を見ていきましょう。
3.1 後見制度支援信託「全般」について
Q1 後見制度支援信託はどの類型でも使えますか?
使えるのは次の2つの類型です。
- 成年後見
- 未成年後見
※保佐、補助、任意後見では利用できません。
Q2 信託できる財産に制限はありますか?
後見制度支援信託を利用して信託できる財産は「金銭」だけです。
不動産、車、株式、国債などは信託することはできません。
3.2 信託契約後の後見事務について
Q1 「予想していなかった大きい出費が必要になった」、どうすればいいですか?
その時は「一時交付金」を請求することができます。
交付金を受け取るためには「必要な金額」と「その理由」を記載した報告書を家庭裁判所へ提出し、許可を受けます。
【必要書類】
- 報告書
- 一時交付金が必要となることを裏付ける書類
- 信託会社から受領した直近の信託財産状況報告書
- 後見人が管理している通帳の写し
Q2 「自宅から施設に入所することになり収支が変わった」、定期交付金額を変更したいのですがどうすればいいですか?
定期交付金額を変更するためには、「変更前後の金額」と「その理由」を書いた報告書を家庭裁判所へ提出します。
【必要書類】
- 報告書
- 変更の理由を裏付ける書類
- 信託会社から受領した直近の信託財産状況報告書
- 後見人が管理している通帳の写し
Q3 後見制度支援信託を利用すると、家庭裁判所の監督は受けなくなるのですか?
後見制度支援信託を利用しても、家庭裁判所の監督は受けます。
信託を利用する場合でも、信託されなかった財産は成年後見人が管理することになるからです。
家庭裁判所から、いつ報告を求められても慌てることがないように、収支を忘れずに記録する癖をつけましょう。
4 まとめ
いかがでしたでしょうか。
後見制度支援信託は(財産が多い)親族後見(家族が後見人になる場合)において欠かせない重要な役割を担っています。
家庭裁判所から『「後見監督人をつけるか」「後見制度支援信託」を使うか選んでください』と言われても制度の中身がわからなければ選べません。
このページの制度概要をしっかり読んで、自分たちの将来にとってどちらの選択がベストから選ぶようにしましょう。