低収入で医療が受けられない!を解決する医療扶助【成年後見人の知恵袋】
私たちは生きている限り、病気やケガに見舞われることがあります。これは収入の多寡(たか)にかかわらず誰にでも起こり得ます。お金持ちでも低所得者でも、おなじように病気になったり、ケガを負ったりします。
私が成年後見人としてサポートをしている方のほとんどは、身内がおらず、さらに「財産」も「収入」も少ない人ばかりです。(誰も成年後見人になりたがらない人について、積極的に成年後見人の依頼を受けていることもありますが...)
そうすると、多くの人が当たり前のように受けられるサービスが受けられずに頭を抱える場面に出くわすことがあります。その代表例が医療でしょう。
「お金がないから治療を受けない」
そういうわけにはいきません。高齢者にとって治療の先延ばしは命に直結します。そこで、今回は収入が少ない方でも医療が受けられる制度をご紹介したと思います。
1 低所得者が医療を受ける方法
収入や財産が少ない人でも医療を十分に受けられるようにするために次の制度が用意されています。
- 生活保護制度による医療扶助
- 無料低額診療の申請
- 医療保険一部負担金等減免・免除・徴収猶予の申請
生活保護のイロハ
「生活保護ってそもそも何だっけ?」
生活保護とは、収入も財産も少なく生活が苦しい方を支援するしくみです。
厚生労働省によれば、
生活保護は資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、国民の生存権を保障している日本国憲法25条に基づいて健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度とあります。
要するに「お金がない人に対しお金を援助して、その間に就職先などを見つけて、ふたたび自立するように頑張ってね」という制度です。
そして、次に気になるのが、
「で、いくらもらえるの?」
生活保護費は一律に同じ金額をもらえるわけではありません。その人によって金額は異なります。
国が定めている「最低生活費」というものがあり、それを下回っている場合に、その不足分を受け取れます。これは家族の人数や住む環境によっても違ってきます。生活保護を受けようとする人の最低生活費を計算して、保護費のベースを決めていきます。
そして、特別の事情がある方はさらに金額が修正されます。以下に加算事項をご紹介しますが、暗記する必要はありません。「こんな場合は金額が変わるんだな」と思ってもらえれば大丈夫です。
【いろいろな加算事項】
- 妊産婦加算
- 母子加算
- 障がい者加算
- 重度障がい者加算
- 重度障がい者家族介護料
- 在宅重度障がい者介護料
- 介護施設入居者加算
- 在宅患者加算
- 放射線障がい者加算
- 児童養育加算
- 介護保険料加算
(1)生活保護制度による医療扶助
生活保護の制度においては、最低限の生活を維持することができない人に対して、医療の扶助として「医療」を提供しています。
かんたんに言ってしまうと、生活保護を受けている人はタダで医療を受けられるということですね。ただし、他の制度を使って医療扶助が受けられる人はそちらが優先されます。
【提出書類】
- 申請書
- 個人番号カード(または通知カードおよび本人確認書類)
※各福祉事務所により異なります。
【申請先】
- 居住地の福祉事務所
【流れ|利用手順】
STEP1 福祉事務所へ申請書を提出します。
STEP2 福祉事務所に必要と認められると医療券・調剤券が発行されます。
STEP3 医療券を提出し、受診します。処方箋が発行された場合は、処方箋と調剤券を薬局へ提出し、薬を受け取ります。
(2)無料低額診療の申請
【制度概要】
経済的な理由から必要な医療サービスを受けられないといった事態を避けるために、医療費の全額または一部を免除したり、減額したりする制度です。
【利用できる人】
- 病気やケガなどにより収入が一時的になくなり、医療費を支払うことが困難になった者
- 給料や年金が少なく、生活費を差し引くと医療費の支払いが難しい者
- 失業・リストラのため収入が一時的になくなり、医療費の支払いが困難な者
- 医療費が支払えず、治療を受けられず苦しんでいる者
- ホームレス
- DV被害者
- 人身取引被害者
など
【提出書類】
- 無料または低額診療申請書
- 世帯の収入証明書(給与明細・課税証明書・源泉徴収票など)
【申請先】
- 医療保険加入者 : 診療を受ける認可医療機関
- 医療保険未加入者 : 住所地の市区町村担当課
【流れ|利用手順】
(医療保険に加入している場合)
STEP1 認可医療機関に相談し、申請書を提出します。
STEP2 認可医療機関と面談をします。
STEP3 申請書と面談の内容を元に調査し、その結果が通知されます。
(医療保険に加入していない場合)
STEP1 市区町村に申請書を提出します。
STEP2 審査が通ると無料診療券または低額診療券が発行されます。
STEP3 認可医療機関に提示します。
(3)医療保険一部負担金等減免・免除・徴収猶予の申請
【制度概要】
災害や病気などにより生活が著しく困難になった場合に、医療費の自己負担額が免除されたり、減額されたりする制度です。
【利用条件】
次の1から4の条件に当てはまり、5~7の条件をすべて満たすと利用できます。
- 災害(震災・風水害、火災等)により死亡したり、障がい者となったり、または資産の大半を失ったとき
- 干ばつ、冷害、凍霜害等による農作物の不作、不漁により収入が減少したとき
- 事業または業務の休廃止、失業等により収入が著しく減少したとき
- 上記に類する事由があったとき
- 世帯内に入院患者がいること
- 世帯収入が生活保護基準以下であること
- 世帯内の預貯金が生活保護基準の3ヶ月以下であること
【提出書類】
- 申請書
- 被保険者証
- 世帯の収入を証明する書類
- 世帯全員の預金通帳
- 理由が失業の場合は、それを証明する書類
- 理由が災害の場合は、それを証明する書類(罹災証明書など)
- その他、申請理由を明らかにする書類
- 個人番号カード または 通知カードおよび本人確認書類
【申請先】
- 住所地の市区町村担当課
【流れ|利用手順】
STEP1 市区町村へ申請書を提出します。
STEP2 審査にとおると証明書が発行されます。
STEP3 医療機関に証明書を提示します。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
収入が少ない方は、体に異常をきたしても我慢して病院に行かない傾向にあります。成年後見人としてサポートする側も、本人がそのような意向を強く示すと通院をためらってしまう人がいるかもしれません。
健康は、お金とは比べ物にならないくらい大切でかけがえのないものです。制度をうまく活用し健康管理をしていきましょう。