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行方不明の相続人とやっぱり連絡が取れない!そんな時は不在者財産管理人です!

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  • 「行方不明の兄と連絡が取れなくて、遺産分割協議ができない」
  • 「手紙を出しても返事がこない」
  • 「行方不明の相続人へ手紙を送っても、あて先の住所に受取人がいないとして戻ってきてしまう」

 

こんなとき、相続手続きを進めようとする他の相続人はどうすればいいのでしょうか。

 

  • その人を除いた相続人全員で遺産分割をする
  • その人の取り分(法定相続分)を確保したうえで、遺産分割協議をする
  • 弁護士の立ち合いのもと、遺産分割協議をする

 

いずれも、ダメです。たとえ遺産分割協議をしても、話し合いに参加していない相続人が一人でもいれば、その「遺産分割協議」は無効です。遺産分割としての効力は認められません。

 

「じゃあ、どうすればいいんだ」

 

このようなケースでは「不在者の財産管理人」を選任し、相続手続きを進めることになります。

 

そこで、今回は行方不明の相続人がいるために相続を進めることができない方のために「不在者の財産管理人選任」の手続きについて、わかりやすくご説明したいと思います。

 

1 不在者の財産管理人

会計士の画像

不在者の財産管理人とは、そのままですが不在者の持っていた「財産」を管理する人です。

 

「家」でも「車」でも、あらゆる財産は使わないとどうなるでしょうか。「床や壁にカビが生えたり」「エンジンがかからなくなったり」と不具合が出てきます。このように財産とは、しっかり管理していないと価値が下がってしまいます。

 

そうならないために、不在者の財産を守るのが、不在者の財産管理人です。

 

相続のケースに当てはめると、行方不明の相続人ために不在者の財産管理人を選任し、その相続人に代わって遺産分割をしてもらいます。

 

これが相続における「不在者の財産管理人」の活用方法です。

 

2 解決事例のご紹介

付箋本の画像

「連絡が取れない相続人がいる」と一口に言っても、まったく同じ境遇にいる人はいません。

そこで、少しでもイメージしてもらえるように、実際に解決した案件を紹介したいと思います。

 

相続人である二男と連絡が取れなくなってしまったケースです。少し長いので、時間がない方は『3 不在者とは?』からお読みください。

 

【登場人物】
相続人  : Aさん・長男・二男
被相続人 : Aの夫

 

2.1 「相続人である二男」が行方不明

相談者A(60歳・女性)さんの夫が亡くなりました。

相続人には、Aさんの他に「長男」と「二男」がいます。ふたりともAさんの子です。

 

長男は、Aさんとともに暮らしていますが、二男とは「15年以上」連絡が取れていません。

 

2.2 さかのぼること17年前

二男は、大学卒業後に就職した会社を3か月で辞めてしまいました。アルバイトを始めても、長続きしません。

 

気が付くと、仕事もせずに家に引きこもるようになっていました。

要するに「ニート」です。

 

Aさん夫婦は、「そのうち気持ちが変わって仕事をするだろう」と淡(あわ)い期待を抱いて見守ることにしました。

 

ニート生活が1年くらい経った頃、Aさんも心配になり、二男に代わって求人情報に目を通します。「この会社は、働きやすそうだよ」「応募してみたら」と二男に軽い気持ちで声をかけました。

 

すると二男が激しく反発し、Aさんを突き飛ばすようにして部屋から追い出してしまいました。

 

それを見ていた父親は、とうとう我慢の限界です。部屋にムリやり押し入り、二男に説教をします。

 

「いつまでも甘えているな。働かないなら出ていけ」

 

二男は家を飛び出し、それ以来、連絡は取れていません。

 

2.3 話は「現在」に戻り、遺産分割をするため二男を探すことに!

二男が家を飛び出してから16年の歳月が流れようとしています。16年間、二男からは一度も連絡はありません。二男と連絡が取れなければ、預金を引き出すこともできません。

 

困ったAさんは、「探偵事務所」に二男の捜索を頼むことにしました。

 

しかし捜索の甲斐(かい)もなく二男と会うことはできませんでした。時間だけが流れ、旦那さんが亡くなってから1年近くが経過していました。変わったことといえば、探偵事務所に払った「100万円」がなくなったことだけです。

 

2.4 藁にもすがる思いで司法書士事務所へ

それから知人のススメもあって、司法書士事務所に相談に行くことにしたAさん。

これまでの経緯を話し、藁(わら)にもすがる思いで「司法書士おと総合事務所」に依頼をしました。

 

おと総合事務所は、まず戸籍をたどり、二男の最新の本籍地を調べる作業に取り掛かります。本籍地を特定したら、そこを管轄する役所へ「戸籍の附票」を請求しましました。

 

依頼を受けてから3週間ほどで、二男の住所を突き止めました。

 

次に、住所がある土地に建てられている建物の「登記事項証明書」を取ります。すると、所有者が二男になっていました。住宅ローンも組んでいます。

 

間違いなく二男はここに住んでいるとの確証を得た「おと総合事務所」は、Aさんに、これまでの想いを込めた手紙を書いてもらえるようにお願いしました。

 

その手紙とともに「これまでの経緯を書いた報告書」を郵送します。

 

狙い通り、二男から連絡がきました。

 

17年前のエピソードからは想像もできないくらい協力的な方で、スムーズに遺産分割協議が整いました。

 

2.5 事例の総括

二男も、いまでは結婚し二児の父になっていました。きっかけがつかめず、Aさん夫婦に連絡ができなかったようです。

 

親の気持ちが理解できる年齢になったことで、あの頃の気性の激しさはなくなっていました。

 

この事例では、無事に連絡が取れ、遺産分割協議ができてしまいましたが、そうならないケースも多くあります。

 

そのような場合は、連絡が取れない相続人に代わって、遺産分割協議をする不在者財産管理人を選任することになります。

 

不在者の財産管理人の選任には、「これまでの相続人調査の経過」と「その証拠」を提出することになります。調査した資料は大切に保管しておいてください。

 

3 不在者とは?

相続する人と連絡取れない!を解決する方法。慌てずに読んでください

不在者とは、これまで住んでいた「住所」や「居所」を去り、戻ってくる見込みがない人のことです。

 

住んでいる場所がわかっていれば不在者とは言いませんし、数日間「連絡が取れない」だけの人も不在者とは言いません。

 

たまにある相談が、

  1. 「居場所はわかるが、仲が悪くて連絡を取りたくない」
  2. 「それでも、遺産分割協議をしたいから不在者の財産管理人の手続きをしてほしい」

というものです。

 

これは「不在者」ではありません。

 

この気持ちもわかりますが、このような状況では「不在者の財産管理人」の手続きは使うことはできないので注意してください。

 

4 不在者財産管理人の申し立て

書類受け取る画像

不在者財産管理人の申し立てについてご説明します。

 

不在者の財産管理人は「家庭裁判所」において選んでもらう必要があり、財産管理人として正式に仕事をするためには裁判所のお墨付きが必要ということです。

 

自称、不在者財産管理人は「ただの無権利者」です。その人は何もする権限はありません。

 

4.1 申立人|誰が申し立てをすることができるのか?

不在者の財産管理人を選んでほしいと裁判所へ申し出できるのは、

 

  • 利害関係人
  • 検察官

 

です。

 

利害関係人とは、次のような人たちです。

  • 不在者の「妻」または「夫」
  • ほかの相続人
  • 債権者(不在者に対する)

 

4.2 必要書類|どのような書類を用意すればいいのか?

不在者の財産管理人を選んでもらうためには、不在者であることを裁判所にわかってもらう必要があります。それを証明できるだけの書類を準備し、家庭裁判所へ提出します。

 

次の書類を用意して申し立てをしましょう。

  • 不在者の戸籍謄本
  • 不在者の戸籍の附票
  • 管理人候補者の住民票または戸籍の附票
  • 不在の事実を証する資料
  • 不在者の財産に関する資料
  • 利害関係人からの申し立ての場合、利害関係を証する資料

 

4.3 管轄裁判所|どの裁判所に申し立てるのか?

管轄の裁判所は次のとおりです。

  • 不在者の従来の「住所地」または「居所地」を管轄(かんかつ)する家庭裁判所

 

4.4 不在者の財産管理人になるための資格

財産管理人になるために「弁護士」や「司法書士」などの資格は必要ありません。誰でも就任することができます。

 

一般的には、不在者の妻や夫などの親族がなるケースが多いです。

 

遺産分割をするために財産管理人を選任する場合は、ほかの共同相続人ではなく「利害関係がない親族」を候補者とすると手続きはスムーズに進みます。

 

候補者のポイント

財産管理人は、不在者の財産を守ることが仕事です。

遺産分割協議の相手方である「他の共同相続人」を管理人にすることは不在者の財産を守るという観点から望ましくはありません。

申立書に「財産管理人の候補者」を書くことができますが、候補者を書かずに提出しても問題ありません。

 

そのときは、弁護士や司法書士が管理人として選ばれることになります。

 

5 管理人就任後の流れ

相続手続きの専門家を知ろう

不在者の財産管理人に選ばれてからの流れを見ていきましょう。

 

5.1 管理人の業務と財産目録作成+裁判所への報告

不在者の財産管理人は、不在者の財産を管理していきます。適切に管理するためには、どれくらいの財産があるのか把握することが不可欠です。

 

財産を把握するために、まず財産目録を作ることになります。そして、裁判所の監督を受けるとともに、不正がないように定期的な報告をする義務があります。

 

5.2 財産管理人は保存行為しかできない

不在者の財産管理人は、「財産を守る」ことが役目です。財産を増やすことまでは求められていません。

 

そのため、財産の現状を維持する行為しかできないのです。財産管理人が「財産を売却したり」「お金を借りたり」することは越権行為(えっけんこうい)です。

 

では、今回の目的である遺産分割協議は保存行為に含まれるのでしょうか。結論から言ってしまうと遺産分割協議は保存行為ではありません。ですので財産管理人が遺産分割をするためには家庭裁判所の許可を受ける必要があります。

 

【遺産分割における注意点】

「財産管理人」は不在者の財産を守ることが仕事なので、「不在者の取り分」が法定相続分を下回るよう「遺産分割協議の内容」だと家庭裁判所は許可を出してくれない可能性が高いでしょう。

 

5.3 不在者財産管理人の職務が終わるとき

「不在者の財産管理人」の仕事は次のようケースで終了します。

 

  • 不在者が見つかったとき
  • 不在者が死亡したとき
  • 不在者について失踪宣告がされたとき

 

6 まとめ

「兄弟と長い間、連絡も取れず居場所もわからない」

このような悩みを抱えている方も、諦めないでください。

 

場合によっては、不在者財産管理人を選任することによって解決できるかもしれません。

ただし、不在者の財産管理人の制度も万能ではありません。

 

希望通りの遺産分割協議が整わないこともあるので、その点は忘れないようにしましょう。

 

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