相続登記の期限|放置して起きた悲しい3つの体験談
相続登記を放置して起きてしまった「悲しい出来事」をご紹介したいと思います。
これからご紹介する物語は特別なことではありません。誰にでも起こる可能性がある身近な問題です。
この物語を読んで、相続登記を先送りすることの裏には「どのような問題が潜んでいるのか」を知っておきましょう。
目次
1 遅かれ早かれ相続登記をすることになる理由
相続登記は義務ではありません。相続登記をしなくても誰からも怒られることはありません。罰則もありません。それでも、相続登記をしたほうがいい理由とはなんでしょうか。
それは、相続登記をしないと何もできないからです。
- 土地を売却する
- 融資を受けるために不動産を担保に入れる
- 家を貸す
これらの行為は土地の所有者しかできません。そして、所有者かどうかは「不動産登記」を見て調べます。
日本における不動産取引は「登記」に全幅の信頼を置いています。
例えば、ある不動産について自分が所有者だと名乗る人がふたりいたとします。この場合は不動産登記に所有者と書いてある方を「真の所有者」として扱っていきます。私たちの社会は、このようなルール(法律)になっているからです。
これが相続登記をしないと(事実上)何もできないと言われる所以(ゆえん)です。登記は不動産の持ち主であることの証(あかし)なのです。
2 相続登記を放置して起きた「悲しい3つの出来事」
相続登記は義務でないことから「放置する人」もいます。これはとっても危険なことです。放置してしまう人は「この裏に隠れている危険」を知らないから、このような行動に出てしまうのでしょう。
そこで、ここからは相続登記を放置したことによって大変な目にあってしまった人の体験談をご紹介したいと思います。
- 数次相続|相続人が増え当初の話し合いと違う結果に!
- 相続人の一人が認知症に・・・
- 人の気持ちは移ろいやすい
2.1 数次相続|相続人が増え当初の話し合いと違う結果に!
おじいさん ・・・被相続人
X ・・・おじいさんの娘
Y ・・・おじいさんの息子
A ・・・Xの子(おじいさんの孫)← この話の主人公
B ・・・Yの子(おじいさんの孫)
『それなら1000万円を払ってくれ』
Aが「いとこのB」から言われた言葉です。
ことのはじまりは10年前にさかのぼります。
2008年にAのおじいさんが亡くなりました。相続人は、「X(Aの母)」と「Y(Bの父)」の2人。Aと母Xは、おじいさんとともに「遺産である家(実家)」に住んでいました。
「実家はXが相続するといい」
実家のある千葉県を離れ、埼玉県で家族とともに生活を送っていた「Y」は、母Xにこのように言いました。
遺産である実家(土地と建物)は、母Xが相続するのが一番いいとYは思ったのでしょう。
それから5年が過ぎようとした2013年。Yは病気で倒れ、帰らぬ人となってしまいました。そして、おじいさんが亡くなってから10年が経った2018年、母Xが他界しました。
おじいさんから相続した家には、Aとその家族が今でも住んでいます。
不動産の名義は、おじいさんのままです。
面倒なことを先送りにしてしまう性格の母Xは、相続登記をしていませんでした。
Aは、母Xの死をきっかけに実家の家と土地を自分名義に相続登記をしようと決意します。母の四十九日を終え、AはBに相続登記の協力を切り出しました。
そして、Bから言われた一言が冒頭で紹介した言葉です。
「それなら1000万円を払ってくれ」
実家の価格が約2000万円。Bの父Yの取り分は1000万円で不当に高い金額ではありません。
そのあとの話し合いで、AがBに600万円を分割で支払うことで決着しました。
今でもAは、その支払いを続けています。
もし、母Xがもっと早く相続登記をしていれば、このような事態は回避されていたことでしょう。
2.2 相続人の一人が認知症に・・・
姉X ・・・被相続人
A ・・・Xの弟 ← この話の主人公
B ・・・Xの妹
AとBの姉Xが亡くなりました。姉Xには、夫やこどもはいません。相続人は弟Aと妹Bのふたりだけです。
遺産は姉Xが住んでいた家(土地と建物)があるだけです。弟Aと妹Bは、それぞれ別の場所で生活を送っており、遺産である家を使う予定はありません。
そんなこともあって、相続登記はしないでそのままにしていました。
それから3年後、弟Aは遺産である家を買ってもよいという人と出会います。売れると思っていなかった弟Aは、すぐに売却することに。
しかし問題が起きます。妹Bが認知症になっており、遺産のこともまったく覚えていません。
困った弟Aは、司法書士事務所に相談に行きました。
「妹Bに後見人をつけないと手続きを進めることはできません」
司法書士からそう告げられました。
自分ひとりのハンコだけで手続きを進められると思っていた弟Aは、ショックを隠し切れません。
成年後見の手続きをしてから相続登記と売却をするとなると、売却に着手するまでに早くても半年はかかります。
他に方法がない弟Aは、後見の申し立てから司法書士に頼むことになってしまいました。
2.3 人の気持ちは移ろいやすい|相続人も同じです
A ・・・この話の主人公
B ・・・Aの弟
Aは亡父の実家(土地と建物)を相続しました。Aはその実家に家族と一緒に住んでいます。
Aには仲の良い弟Bがいますが、その弟BもAが実家を相続することを快く受け入れてくれていました。その仲の良さもあって、Aは相続登記を急ごうとはしませんでした。逆に仲が悪ければ急いだのかもしれません。
それから2年後、Aは弟Bから「父の遺産について話し合いをしよう」と持ち掛けられました。
Aは、頭にクエッションマーク(??)が並んでいます。
「遺産分割は2年前に終わっているだろう」
冗談を言われたと思ったAは笑いながら弟Bに言いました。
弟Bは真剣な表情で、「遺産分割はしていない」ときっぱりと言い切ります。
どうやら弟Bは勤めている会社のリストラ対象になり、さらに娘が認可保育園に入れず、月に6万円の保育料を払うことになったようです。
徐々にふたりの言葉は熱を帯び、きたいない言葉が飛び交います。一歩も引かないふたりの言い争いは、とうとう裁判所へ舞台を移すことに。
最終的に、父の遺産である実家を売却し、ふたりで分けることになってしまった。
2.3 アドバイス|どうすれば良かったのか?
相続登記は放置せずに、すぐに取り掛かりましょう。
手続きは面倒な側面もありますが、それを放置した結果、争いに巻き込まれれば、相続登記の手間とは比べものにならないくらいの精神的なストレスを抱えることになります。
相続登記をすれば、「すべての問題が解決する」とはいいません。
しかし、相続登記をしておけば、先に紹介した事例を回避できていたのも事実です。
手続きをするときに、「義務なのか、そうではないのか」「罰則があるのかどうか」「期限はあるのか」などを気にする傾向にありますが、あなたが一番に考えることは「将来の争いを回避するためにどのような行動をとるべきなのか」なのではないでしょうか。
3 まとめ
相続放棄を放置して起きた3つの悲しい出来事をご紹介しました。
この出来事は特別なことではありません。誰に起きても不思議ではない身近な問題です。
このようなことに巻き込まれないためにも、相続登記は放置せずに、やれるときにやってしまいましょう。