【初心者向け】成年後見制度が3分でわかる!成年後見人でもある司法書士がわかりやすく解説!
「成年後見制度」は、今ではテレビや新聞・雑誌などで取り上げられ、一般的にも広く認知されてきました。あなたも銀行や役所で次のような言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
そのような事情ですと成年後見人をつけない限り、これ以上手続きを進めることはできません。
担当者
これだけ知られるようになった制度ですが「成年後見制度を分かりやすく教えてください」と聞かれると、スムーズに答えられる方は多くありません。
そこで、今回は知っているようで知らない「成年後見制度」について、どのようなものなのか正しく理解できるようにわかりやすくご説明したいと思います。
1 なぜ成年後見制度は必要なのか?
それは、「判断能力が低下してしまった人」の利益を守るためです。詳しく説明していきます。
成年後見制度とは、「認知症」や「知的障がい」などで「正しい価値判断ができなくなってしまった人」をサポートする仕組みです。
まずルール(法律)を見てみましょう。
民法7条
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
これを読んで「そうか、そういうことか」と、うなずける人はどれくらいいるのでしょうか。多くの人はこれを読んでも、よくわかりませんよね。
わかるように解説していきます。
事理を弁識する能力とは「(ある物事についての)良し悪し」を見極める力です。自分がした行為が「良いことなのか」「悪いことなのか」を正しく判断する能力です。
まだピンときませんか?
では具体例をご紹介しましょう。
例えば、あなたが3万円の枕を買うとしましょう。この時、あなたはこのように考えます。
- 3万円の枕を使うと、首や肩のコリが解消される。ぐっすり眠ることができる。次の日は元気に過ごせる。これは安い買い物だ。
または
- 枕は、安くても高くても、それほど変わらない。なら枕に3万円を出すのはもったいない。
このように、買い物(契約)をする時に、「得なのか」「損なのか」無意識に判定しています。
これが事理を弁識する能力です。この言い方が堅苦しいようなら、判断能力と言い換えてもいいでしょう。
この判断能力が低下してしまうと、「たいした価値もない布団」に100万を支払ってしまうといった笑えない事態になってしまう可能性すらあるのです。
こうした事態を避け、本人の利益を守るための制度が「成年後見」です。
2 成年後見制度の種類
成年後見制度には、いくつかの種類があります。これを正確に知っている人は多くありません。後見制度は「その種類」を知るだけで、使い勝手が全然違ってきます。ぜひ覚えてくださいね。
では、さっそく行きましょう。成年後見制度は、まず大きく2つに分けることができます。
- 法定後見
- 任意後見
おそらく「成年後見制度」と聞くと、あなたは「法定後見」をイメージしているのではないでしょうか。テレビやラジオ、雑誌などで取り上げられている成年後見は、そのほとんどが「法定後見」です。
ただそう言われても、それぞれの内容がわからなければ「イエス」とも「ノー」とも判断できませんよね。
- 「法定後見??」
- 「任意後見??」
- 「どっちがどっちなんだ~」
このような声が聞こえてきそうです。それぞれ簡単にご紹介すると、
【 法定後見 】
本人の判断能力が下がったあとに「家庭裁判所」が成年後見人という支援者を選び、その成年後見人が本人の利益を守るためにサポートをする仕組みです。
【 任意後見 】
本人が元気なうちに、もしものときに備えて、「本人」があらかじめ後見人を選んでおき、もしものときが来たら、その後見人が本人をサポートする仕組みです。
ポイントは「誰が」成年後見人を選ぶのかという点です。
- 法定後見は、あなたの判断能力がなくなった後に「裁判所」が選びます
- 任意後見は、あなたが元気なうちに、「あなた」が事前に選んでおきます。
この違いは大きいのではないでしょうか。あなたは「将来」、誰にサポートを頼みたいですか。
では、次に法定後見をさらに詳しく見ていきましょう。
3 法定後見の種類と、なぜ種類が必要なのか?
成年後見制度は本人をサポートするとともに、本人の「行動」や「考え」を制約してしまう側面をもっています(成年後見人などの支援者は、本人の行為を取り消したり、本人に代わって行為をしたりし、本人はその結果を無条件に受け入れなければいけなくなるからです)。
判断能力が下がってしまったと言っても、その程度は人それぞれです。意識がまったくなく自分では何もできない人もいれば、簡単なことなら自分ひとりでできる人もいます。
にもかかわらず、一律に同じ制約を与えてしまうと、必要以上にその人の「行動」や「考え」を制限してしまう恐れがあるのです。
そこで法定後見は判断能力の低下の程度によって、次の3つに分かれています。
- 後見 ( 判断能力の低下 大 )
- 保佐 ( 判断能力の低下 中 )
- 補助 ( 判断能力の低下 小 )
では、一つ一つ詳しく見ていきましょう。
3.1 成年後見
成年後見とは、日常生活をひとり送ることが難しいほどに判断能力が低下している人をサポートする制度です。
- 物を買えばお金を払う
- アパートを借りれば家賃を払う
- お金を貸せば、そのお金を返してもらう
- 他人に、理由もなくお金をあげない
このような当たり前のことを理解できなくなってしまった人を守るための仕組みです。後見相当の人について申し立てがあれば、家庭裁判所は本人をサポートする人として「成年後見人」を選任します。
後見開始の審判を受けた「本人」を成年被後見人(または被後見人)といいます。
- サポートされる人 : 成年被後見人 または 本人
- サポートする人 : 成年後見人
「判断能力がない本人」が、何も考えず反射的に、高額なお買い物をしてしまうと、思いもよらない不利益を受けてしまうことがあります。
そうならないために成年後見人は、本人を代理してさまざまな行為をする権限が与えられえています。
現金の管理や預貯金の出し入れ、不動産の売買、施設と入所に関しての契約などを、本人に代わって行います(代理権)。
しかし、この代理権だけでは本人のサポートは、十分に果たすことはできません。成年後見人は、本人と「365日24時間」ずっと一緒にいるわけではありません。
成年後見人の見ていないところで、本人が押し売り販売を断れずに、価値のない商品を高いお金を出して買ってしまうかもしれません。
そのような場合に、本人の利益を守るために、成年後見人には本人のした契約を取り消すことができる権利を与えられています(取消権)。
まとめると成年後見人には、本人の利益を守るために次の2つの権利が与えられています。
- 代理権
- 取消権
これは大切な権利なので覚えておいてくださいね。
3.2 保佐
保佐とは、習慣化されている日常的な買い物くらいならできるが、重要な取引になるとひとりでは難しいという人をサポートする制度です。
保佐相当の人について、申し立てがあれば家庭裁判所は本人を支援する人として「保佐人」を選任します。保佐開始の審判を受けた「本人」を被保佐人といいます。
- サポートされる人 : 被保佐人 または 本人
- サポートする人 : 保佐人
本人は判断能力が低下しているとはいえ、日常生活はひとりで送ることができます。そのため成年後見人と違い、当然に保佐人が本人を「代理」して契約を結ぶことはできません。
しかし、日常生活に支障はないとはいえ、本人も「重要な取引」についてはひとりだと不安が残ってしまう方です。
そこで本人に不利益を与えないために、本人がそれらの行為(重要な取引)をするときは、保佐人に相談し、「保佐人の同意」を受けたうえでないと、そのような行為をすることはできません(同意権)。
保佐人は、本人にとってその取引が利益になるかどうかに注意しながら同意をするか決めていきます。
万が一、重要な取引について同意をもらわずに本人が契約をしてしまった場合は、保佐人はその行為を取り消すことができます(取消権)。
ここまで、当たり前のように「重要な取引」という言葉を使ってきましたが、何がこれにあたるのかわかりませんよね。法がいう「重要な取引」をご説明します。重要な取引(重要な法律行為)とは次のことをいいます。
- 預貯金の出し入れ
- お金を貸すこと
- お金を借りたり、保証人になったりすること
- 不動産を売ったり、買ったりすること
- 自分から訴訟をすること
- 贈与、和解、仲裁をすること
- 相続の承認や放棄をしたり、遺産分割をしたりすること
- 贈与や遺贈を断ったり、不利な条件がついたそれらを受けること
- 新築、改築、増築や大修繕をすること
- 一定期間を超える賃貸借契約をすること
完璧に覚える必要はありませんよ。イメージだけ持ってください。まとめると保佐人には、被保佐人の利益を守るために次の2つの権利が与えられています。
- 同意権
- 取消権
3.3 補助
補助に当たる人は、基本的にひとりで何でもできます。でも年齢を重ねると、相手の言っていることがよくわからなくて、不安になることってありますよね。
その程度が、他の人より少し高く、ひとりで契約をするのは不安が残る方をサポートする制度が補助です。
補助相当の人について、申し立てがあれば、家庭裁判所は本人を支援する人として「補助人」を選任します。補助開始の審判を受けた本人を「被補助人」といいます。
この申し立てをするためには「本人の同意」が必要です。
- サポートされる人 : 被補助人 または 本人
- サポートする人 : 補助人
本人は、重要な取引については不安が残るものの、ほかの類型と違い、自分の行為がどのような結果になるのか、まったく見通せないわけではありません。
そのため成年後見人や保佐人と違い、「補助人」には当然に「代理権」や「同意権」、「取消権」はありません。
本人の状況に応じて、「どのような行為」に「代理権」や「同意権」を与えるのか考え、補助の申し立てと同時に家庭裁判所へ申し出ることになります。
これらの権利(代理権と同意権)の付与の審判を求める場合にも本人の同意が必要です。
4 まとめ
いかがでしたでしょうか。
このページでは成年後見制度の基本について説明させてもらいました。成年後見の共通の考え方は、判断能力が下がってしまった人の利益を守るための仕組みです。
この考え方さえ間違わなければ、大きく間違うことはありません。常にこの考えを頭に入れておきましょう。