【初心者向け】相続財産の調査のコツ!詳しい遺産の調査方法もわかるよ!
遺産相続において、避けては通れない作業が「相続財産の調査」です。あなたの相続手続きも、これを土台にすべてが始まります。
もし遺産を取りこぼしてしまったら、最悪の場合、一からやり直しになる可能性もあります。
「最悪の場合、手続きがやり直しに・・・」
こんな未来を避けるためにも、ここでは「相続財産の調査のコツ」と「具体的な調査方法」をわかりやすくご説明したいと思います。
目次
1 勘違いしている人が多い「相続財産の調査」
突然ですが、相続財産の調査というと、あなたはどのようなことを思い浮かべますか?
- 預貯金がいくらあるのかを調べる
- 保険金がいくら入るのかを調べる
- 不動産の価格がどれくらいなのかを調べる
このように「価格を調べる」ことだと考えていませんか。どれも間違いではありませんが、まだちょっと待ってください。誰でもそれが「どれくらいの価値」があるものなのか気になるものです。
でも、それは一時(いっとき)忘れてください。
遺産の調査には段階があり、そしてそれには順番があります。それを間違うと、相続財産を取りこぼし、取り返しのつかない事態に陥ってしまうかもしれません。
その「段階」と「順番」とは、
- どのような相続財産があるのか
- その相続財産の価格はいくらなのか
です。これを同時に行ってはいけません。どのような相続財産があるのかを調べ終わってから、それはいくらいの価値があるものかを調べます。
このページでは特に重要な「どうような相続財産があるのか」にスポットを当ててお話したいと思います。
2 相続財産の調査のコツ
いきなり「相続財産の調査をしろ」と言われても困ってしまう人もいるでしょう。何から手を付けたらいいのかわかりませんよね。じつは相続財産の調査には「コツ」があるのです。
たとえば次のような人たちがいるとします。
- 「相続財産といえば、このようなものがあるな」とイメージできている人
- 「相続財産ってどんなものがあるのだろう」と考えている人
どちらがスムーズに相続財産の調査ができるか明らかですよね。前者のほうがスムーズに調査を進めることができるしょう。まず、相続財産の調査に入る前に「どのようなものが相続財産になるのか」イメージを持ってください。ではいきますね。
相続財産と言えば、次のようなものがあります。
- 不動産
- 預貯金
- 株式その他の有価証券(国債や投資信託など)
- 生命保険
- 借金その他債務
こんなところでしょうか。他にも、
- 自動車
- 家財道具
- 衣類
- 絵画や書籍
- 腕時計やネックレスなどの貴金属
などもありますが、こちらの相続財産は相続人の方が一番、把握しているものだと思いますので省略します。
では一つ一つ具体的に見ていきましょう。
3 不動産の調査の方法を覚えよう
不動産はくせものです。ご両親が「どこに」「どのような」不動産を持っているのか正確に把握できている人は多くありません。
「うちの相続財産は自宅だけだ」
それは思い込みかもしれませんよ。以前、このよう相談がありました。
自宅の相続登記をお願いします。
遺産は、父(被相続人)が住んでいた茨城県にある自宅だけです。他に相続財産はありません。
このような相談でした。
しかし持参してもらった古い権利証を見てみると・・・
文字が掠(かす)れて読みにくい権利証でしたが、埼玉県にも土地を所有しているようでした。相談者へ、埼玉県の土地について心当たりがないか尋ねました。
「埼玉にある土地なんて全然知らないな」
まったく心当たりはないようです。念のため調査をしてみると、その土地は依頼者のお父様のものでした。その土地のことを、お父様は相談者に話していなかったようです。
もしかしたら、お父様も忘れていたのかもしれません。
思い込みで手続きを進めてしまう怖さが、少しはわかっていただけたのではないでしょうか。
3.1 不動産調査の裏技
具体的な不動産の調査方法を見ていきましょう。不動産といっても、その数は星の数ほどあります。外を歩けば、必ず不動産が目に飛び込んできます。不動産を見ない日はないでしょう。それほど、不動産は多いのです。
そのたくさんある不動産の中から、ご両親の持っていた不動産を探し出すことは簡単ではありません。自分が持っていた不動産のリストでも本人が作っていない限り、見つけるのは骨が折れる作業でしょう。
『手掛かりがないのにそんなことができる人はいない』
実は、ひとりだけ探し出せる人がいます。星の数ほどもある不動産の中から「遺産である不動産」を探し出せる人がいるのです。
その人を見つけて、その人に聞けば「不動産の調査」は簡単だと思いませんか。その人とは、一体誰でしょう。
「古くからその地域に住んでいる人」
そうですね。わかるかもしれません。でも違います。その人は本人と同じくらい、もしくは本人以上に知っているのです。
【ヒント】
不動産を持っていると税金がかかります。
その税金を取るためには、不動産の所有者を正確に知っている必要があります。
もうお分かりですね。それは「市区町村」です。すいません、人というと誤解がありましたね。市役所は、市内にある不動産について誰が所有者なのか一目でわかる帳簿を持っています。
それを元に税金を請求するわけです。私たちは、これを逆に利用しましょう。市役所に、被相続人(亡くなった人)がどのような不動産を持っていたのか問い合わせます。具体的には、市区町村役場に対し「名寄帳」という書類を請求します。
東京23区では、都税事務所に請求します。
3.2 被相続人の自宅で権利証や固定資産税の納税通知書を探そう
名寄帳は便利ですが、「不動産がある市区町村」に請求しなければいけないといった制約もあります。
例えば、あなたのお父さんが「茨城県A市」に住んでいて「千葉県B市」に不動産を持っていたとします。他に不動産は持っていないと仮定します。
この場合は「千葉県B市」に名寄せを請求しないと不動産情報を手にすることはできません。もしも茨城県A市に名寄せを請求すれば「該当なし」で返ってきてしまいます。
名寄せを効果的に使うためには、不動産を持っていたであろう市区町村を特定しないといけないわけです。市区町村を特定できない場合はどうすればいいのでしょうか。
「諦める」
そんな人はいませんよね。このような状況で有効的な手段は「家宅捜査」です。拍子抜けのような作業ですが、ここから手掛かりを見つけることは少なくありません。がんばって、次の書類を見つけましょう。
- 登記済権利証(または登記識別情報)
- 固定資産税の納税通知書
【登記済権利証】
- 不動産を買った
- 不動産をもらった
- 不動産を相続した
不動産を手に入れれば、通常、不動産登記をしているはずです。登記をすると、登記済権利証が発行されます。これを見つければ大きな手掛かりになります。
【固定資産税の納税通知書】
さきほど説明したように不動産を持っていると税金を払う必要があります。市区町村は何も言わなくても納税通知書を送ってきます。
課税される不動産を持っているかぎり必ず送られてきます。不動産の調査では、これが大きなヒントになります。
これらを見つけると、そこから不動産を特定することができます。そして、念のためその地域を管轄する役所へ名寄帳を請求してみましょう。
4 預貯金の調査の方法を覚えよう
預貯金の調査は、まず被相続人が使っていた銀行を突き止めましょう。銀行を突き止めるといっても支店名まで調べる必要はありません。
- 横浜銀行
- ちば銀行
- 常陽銀行
- 静岡銀行
- みずほ銀行
- 三井住友銀行
- 三菱UFJ銀行
- ソニー銀行
- 住信SBI銀行
- イオン銀行
など、銀行名まで大丈夫です。信用金庫や信用組合、ろうどう金庫なども忘れないでくださいね。被相続人が使っていた金融機関を洗い出しましょう。
4.1 銀行を特定するためには
まずは家宅捜査です。被相続人がどこの口座を持っていたのかは不動産と違って「役所」が把握しているわけではありません。その情報は誰も知らないのです。地道に家を探しましょう。
- 通帳
- キャッシュカード
- 証書
- 携帯に入っている銀行のアプリ
- 手紙
- 銀行のグッズ
これらを見つけたら、それを元に銀行を割り出します。
4.2 銀行に残高証明書を請求する
銀行名がわかったら、その銀行に残高証明書を請求しましょう。特定した銀行に対して、被相続人が持っていた各支店の口座すべてについての残高証明書を出してもらうようにお願いします。
その銀行にある「すべての口座」について情報を出してもらいます。
銀行は、住所や氏名、生年月日をもとに各支店の口座情報を名寄せするシステムを持っています。そのシステムを使って被相続人が持っていた口座を見つけることができます。そして、これをすべての銀行や信用金庫などに対して行います。
中には、一括管理ができていなくて取り扱い支店がわからないと残高証明を出せないという金融機関もあるので注意してください。
5 上場株式その他の有価証券(国債や投資信託など)の調査の方法を覚えよう
多くの人は株式の調査と聞くと次のようなことを調べようとします。
- 会社名
- 株式数
- 株価
間違いではありませんが、この調査は少し先の話しです。まず、あなたがすべきことは株式が保管されている「証券口座」を探し出すことです。
もしも「ソフトバンクの株を買ってきてくれ」と言われたら、ソフトバンクの店舗に行って「株を売ってください」と言いますか。言いませんよね。
株は「証券会社」を窓口にして買います(非上場株式は除きます)。そして買った株は、その証券会社のあなたの証券口座に入ります。
例えば、野村証券を通して次の株を買ったとします。
- A株式会社
- B株式会社
- C株式会社
これらの株は「野村証券にある、あなた専用口座」に保管されています。野村証券に問い合わせれば、あなたの証券口座に入っている会社の株式のすべてのがわかります。「会社名」「保有株式数」「取得価格」など、すべてが判明します。
まず、あなたがすべきことは被相続人が使っていた証券口座(証券会社)を見つけ出すことです。
5.1 家を探してみる
お決まりですが、まずは家を探してみましょう。
- 口座開設の案内書
- 年間取引報告書
- その他証券会社からの通知
これを元に、証券会社を割り出します。
5.2 「ほふり」って便利
「資料が見つからず、証券会社がわからなかった」
まだ諦めないでください。証券保管振替機構(通称:ほふり)に問い合わせてみましょう。
これをすると、被相続人が株式を持っていたのかどうかがわかります。どの証券会社を通して株式を買っても、その情報は「ほふり」に登録されます。
この登録を確認すれば「証券口座」を見つける手掛かりになります。
5.3 証券会社から残高証明を取り寄せる
証券会社が特定できたら残高証明書を取り付けましょう。
そこに、どの会社の株式をどれくらい持っているのかが書かれています。
6 生命保険の調査の方法を覚えよう
まずは家を探して生命保険の手掛かりになりそうなものを見つけてください。
- 保険証書
- 預金通帳(保険会社からの引き落とし部分)
- 保険会社からの手紙
これらが見つかれば保険会社へ問い合わせをします。
【ポイント】
「生命保険金は相続財産ではない」
このようなことを聞いたことはありませんか。そうなんです。生命保険は、相続財産ではないケースが多いのです。
では相続財産かどうか、どのように見分ければいいのでしょうか。見極めのポイントは「受取人」が誰になっているかです。
- 受取人が被相続人 → 相続財産
- 受取人が被相続人以外の人 → その受取人のも。相続財産ではない。
簡単ですね。
7 借金の調査の方法を覚えよう
借金の調査は、ほかの調査とは毛色が違います。気をつけるポイントがいくつかあります。調査するうえで、一番気を付けることはどのようなことでしょうか。
- はなから借金はないと決めつけない
- 借用書が出てきても、感情に任せて破かない
- 被相続人に対して文句を言わない
ほしい。どれも大事ですが違います。最も注意すべきことは、たとえ借金の存在がわかったとしても、
「支払いの猶予」
や
「分割払いの交渉」
などの話し合いをしないということです。これをしてしまうと相続をしたものとみなされて「相続放棄」ができなくなることがあります。これを「法定単純承認」と言うのでしたね。
そうならないために、借金その他の負債が判明しても、債権者と交渉は絶対にしないでください。
7.1 借金その他の負債の資料を探そう
まずは次のような書類が自宅にないか確認してみましょう。
- 督促状
- 請求書や領収書
- 消費者金融やクレジット会社などのカード
被相続人が亡くなると支払いがストップし延滞になります。その状態が続けば「督促状」や「督促の連絡」がくる可能性が高いでしょう。郵送物には十分な注意を払うようにしてください。
7.2 借入状況を問い合わせよう
それでも見つからない場合は「信用情報機関」に問い合わせてみましょう。私たちが借入やクレジット払いをすると、その情報はすべて信用情報機関に登録されます。
- 延滞情報
- 債務整理の経験
- 借入先
- 借入日
このような情報がすべて記録されています。こちらの機関に被相続人の借入があるのかどうかの問い合わせてみるといいでしょう。
信用情報機関としては次のようなものがあります。
- 株式会社シー・アイ・シー
- 株式会社日本信用情報機構
- 一般社団法人全国銀行協会
こちらに問い合わせることで、おおよその借入状況がわかるはずです。借入先がわかったら次は各借入先に実際にいくら借金がるのかを確認しましょう。
8 まとめ
相続財産の調査は「全体をざっくり把握して」から細部の調査に移ります。
- どのような相続財産があるのか
- その遺産の価格はいくらなのか
この順番を守り、進めてください。ひとつでも相続財産がわかると、ついその金額を知りたくなってしまいますが、そこはぐっと堪(こら)えて相続財産のリストアップに全力を尽くしましょう。
この順番を間違わなければ大きな失敗は回避することができます。
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